５０年の歳月を過ぎても色あせぬ、ダイナミズムに溢れた傑作人形劇映画。

本商品に収録された人形劇版「伊賀の影丸」を往年のファンの方々が語るとき、
否定的に語られる事が多いが、
それは「人形劇は子供向け」という思い込みから、
当時の読者層（いつも子供は子ども扱いを嫌う）が反発していたためではないか？

当時原作ファンの少年たちの評判は賛否が分かれたが大人たちからの評判は良かったという話もある、
事実本作は「映像作品」「創作物」を愛するものにとって魅力溢れる意欲的シリーズだ。


人形を「役者」として捉え、
「映画」として作られた画面演出、
人形劇の主流たるビデオ撮影ではなく、
フィルムに刻まれた人形たちの演技と立ち回り、
そして横山光輝キャラの魅力をクールにディフォルメした素晴らしい美術、
白黒画面のもたらす緊張感は「忍者」の殺伐とした戦いを盛り上げる。


原作に登場しないオリジナルキャラクター達は横山キャラ的造型がなされておらず、
そのことがかえって本作に広がりを与える、
と同時にオリジナルキャラと原作キャラの対決には実に「影丸」らしい（横山光輝らしい）アイディアや翻案がちりばめられており見るものを飽きさせない。
（特に唐人のインチキ魔術使いのキャラクターの造型や演技、
妖艶な美女の幻で忍者を欺く狡猾さなどが印象的！）

製作の人形劇団「ひとみ座」は本作の後「ひょっこりひょうたん島」を手がけ、
そのひとみ座から分化独立したのが「東京ムービー」（現トムス　エンタテイメント）であるという、

また演出の長浜忠夫はいわゆる「長浜ロマンロボット」で知られるが本作の影丸をはじめとする人形たちの鼻筋の通った凛々しい顔立ちは後の彼の「美形キャラ」の造型に、
影丸のライバル「邪鬼」の飄々とした立ち居地は同じく「美形ライバル」の原点として影響を与えているのではないだろうか。


また声優陣も本作がデビューとなる「藤田淑子」（一休さん）をはじめとしナレーターには世界の料理ショーの名調子「黒沢良」、
（横山作品では魔法使いサリーの担任、
山部先生役も演じている）キンキンこと愛川欽也、
ドクロベェこと滝口順平等々の名優ぞろい、