「家族神話」に囚われた学者による過去の主張の焼き直し

　ある程度、
「少子化」「未婚化」「高齢単身者」などについて問題意識を持っている人なら、
既出の問題ばかりで、
かつ、
目新しい視点などない本だと思う。
また、
「婚活」という用語で、
若い女性の専門主婦願望を煽った、
というと厳しい見方かもしれないが、
古典回帰を図らせた著者だが、
家族至上主義的なところがあるのだなと思った。

　　なんというか、
ある程度「標準的」な「家族」と生活している読者を、
「ああ、
私は家族がいてよかった」と安心させるための本なんじゃないかと邪推してしまった。
内容的にあまり整理されていないし、
重複や過去の主張の焼き増しが多い。


＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊以下、
引用。


　「人間は、
「自分を必要とし大切にしてくれる存在」なしでは、
幸福に生きられません。
（中略）このような存在を、
専門的用語にいいかれれば、
「アイデンティティ」の源泉ということができます。
（中略）自分を必要とし大切にしてくれる存在との関係をあらわすうまい言葉がなかなか見つかりませんが、
とりあえず、
「親密な関係」と呼んでおきます」

　「現代の日本において、
親密な関係を提供しているのは何でしょうか。
それは、
「家族」です。
」

　「近代社会になり、
宗教的意識が薄れ、
地域コミュニティが衰退する中で、
家族の果たす役割は大きくなってきました」
　と述べ、
たとえばペットやアイドル、
キャバクラなどに心理的に頼るのは
　「自分からの一方通行であったり、
お金がなくなると継続できなかったりします」
　と否定し、
また
　「確かに、
貧困状態に陥ったとき、
政府は、
生活保護などで最低限の生活やケアは保障してくれるでしょう。
ただ、
それは、
最低限にすぎず、
心理的な保障までしてくれるわけではありません」
　と、
社会保障も役割は限定的だとし、
そして、


　「その点でいうと、
親密な関係として頼りになるのは、
やはり現実の家族以外になかなか考えられない時代だといえるでしょう」