最後の一行

　この短編集のなかで、
『A lamp in a Window』という作品が特に好きだ。
カポーティのすべての作品のなかで一番好きかもしれない。
それは、
『最後の一行』があるからである。
『最後の一行』―どんでん返しというのは、
別にそれほど珍しいものではないかもしれないが、
これは、
最後の一行を読むまでは、
霧がモヤモヤしているようで要点がつかめず、
最後の一行を読んで、
初めて、
パッと霧が晴れて全体像が見え、
『そういうことだったのか！』と恐怖感を感じたり、
笑ったり、
感動したり、
要するに、
すっきりするという例である。
おそらく、
最後の一行を読んで、
背筋がゾッとする代表作は、
ロード・ダンセイユの『二壜のソース』であろうが、
この『A lamp in a Window』は、
それとは逆に、
最後の一行でモヤモヤしたものが一気に晴れて、
俄然幸せな気分にしてくれる作品である。

　主人公が真夜中に道に迷い、
緊急避難的に荒野の一軒家でお世話になるが、
そこには、
一人老婆がすんでいて、
優美、
上品、
優しく、
穏やかで、
猫が好きだった。
しかし、
老婆が冷蔵庫を開けるのを見て、
びっくり仰天。
そこには、
猫の死体が十何匹も入れられていたのだ。
すべて、
かつて、
老婆が飼っていた猫で、
その猫が死んだとき、
どうしても、
お別れすることが出来ずに、
そうしたんだと言う。
さすがに、
主人公は、
怖くなって、
その家をお暇し、
道々、
『変なおばあさんだな』とつぶやき続ける。
この妖気的なムードが、
最後の一行で、
パッと満開の桜のようなムードに変わる。
その最後の一行とは？