軍産複合体により葬りされらようとしている記録/記憶を拾い集めること
「50年前、
米軍が最初に除草剤を散布したとき、
その用途は偽装された。
この嘘が持ちこたえられないとわかると、
今度は、
国際司法裁判所を警戒し、
毒害に遭った人びとへの賠償責任を退けるため、
証拠を隠滅し、
将来の研究にまで不正に干渉しようとした。
この謀略は、
有毒物質から財を成した化学会社の援助で行われた。

 だが、
米国政府が今なお世界に対して隠し立てている不正義がもうひとつ存在する。
これまで見て来た過去の不正行為の文脈において、
私たちはそれを検討する必要があるだろう。

 その嘘とは? 米政府は、
これら除草剤がヴェトナム戦争のもっとも重要な前哨基地、
すなわち沖縄には存在しなかったと主張しているのである。


著者は、
米軍がヴェトナムで使用した枯れ葉剤=Agent Orangeを追跡するフィールドワークを通して、
化学兵器の技術・知・人間がいかにして戦前の日独から米国/米軍に渡り、
壮大な人体実験を開始するのかを追跡するなかで、
沖縄に出会うことになる。
退役軍人、
軍雇用員、
地域住民らの証言、
また米国公文書から明らかになっていくのは、
枯れ葉剤使用が1960年代の国際的な世論において非人道的な戦争手段であったことが見越されつつ、
いや、
だからこそ積極的に機密事項として扱われながら米軍により促進され、
結果として形成された生産―流通―消費のブラックボックスを経由しながら世界中に頒布されていく過程の諸断片である。


枯れ葉剤配布により圧倒的な数で犠牲になったのは民間人であり、
ダメージは人間身体の遺伝子情報さえも書き換えつつ、
現在もヴェトナムの人々を苦しめ続けている。
さらには軍事機密であったがゆえに、
当時徴兵制により従軍していたアメリカの下層出身の兵士が、
無知のまま枯れ葉剤散布の媒介として「使用」された。
それら多くの兵士は、
短い期間に死亡することになるが、
その保障と裁判闘争における事実関係の証明は困難を極め、
アメリカの医療制度の構造的差別から、
裁判に勝利することは死活問題となる。
しかしこれらが国家や企業により公的に謝罪されることは殆ど無い。
追跡・沖縄の枯れ葉剤

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