少なくともサイダーによる章だけなら分析的形而上学の入門として優れている

分析哲学における形而上学的な問題を初心者向けに分かりやすく紹介した入門書。
哲学的議論を概観した教科書というよりも哲学的な議論を分かり易く紹介した入門書になっている。
形而上学に関する統一的な見解がある訳ではなく、
あくまで時間や自由意志といった形而上学的なテーマを章毎に別々に議論した内容になっている。
各章は共著者のコニーとサイダーが分担しているが、
その間の出来の差は激しい。
サイダーによる章はどれも専門用語を使わずに分かりやすく書かれているが、
コニーによる章はどれも癖が強く初心者には素直にはお勧めしがたい。


これは分析哲学における形而上学的なテーマについての議論を分かりやすく紹介している本だ。
過去の哲学者に触れるといった哲学史的な話はほとんど含まれておらず、
時間は流れるのか？や自由意志はあるか？といった問題について直接的に議論する内容になっている。
ある程度は様々な立場に配慮されてはいるけれど、
どちらかというとあくまで分かりやすい紹介という側面が強い。
様々な立場を概観するのが目的ではなく議論を紹介するのが目的であり、
初心者が形而上学的な議論を知るための入り口としては最適の本となっている。


人が同じであると言えるためにはどんな条件が必要だろうか。
物質的に同じなだけでは、
私を構成する物質は少しずつ入れ替わっているのだから、
今の私と何年か後の体の中の物質がすっかり入れ替わった私は同じ人ではない事になる。
ならば時空的に連続していれば？心理的に連続していれば？同じ人と言えるだろうか。
はたして人が同じであるといえる条件はあるのだろうか。
これは第一章の人の同一性に関する議論だが、
こうした議論が様々な問題について章毎に紹介されている。