合唱の指導書の効用と限界　本で学べる範囲とは

合唱の指導書を読みながら、
本に書かれていることとそれを会得して上手になる過程の隔たりを感じることがあります。

本書も丁寧に分かり易く書かれており、
間違いもありませんので、
好い内容だと思いますが、
本を読んだからと言ってすぐに合唱が上手くなるものでもないので、
限界やもどかしさも感じました。


東京芸術大学声楽科と前期博士課程を修了した小林絢子さんが、
自身の中学や高校での指導経験を生かして書いているので合唱指導に慣れていない中高の先生は読んで役に立つと思いました。

同様に、
監修と筆者をしている清水敬一さんは、
故関屋晋先生の愛弟子と言える方で、
日本合唱指揮者協会理事長ですので、
本書のような題材の執筆者には最適だと思っているのですが。


第1章「個人のレベルを向上させる」の最初の項目は「歌うための基本を大切にする」でした。
図解で発声の姿勢を示していますのでイメージがつかみやすいでしょう。

呼吸や口の開き方は当然として、
舌の位置は大切なポイントです。
舌をリラックスさせることは、
言うのは簡単ですが、
歌っている最中にこれを意識するのは大変です。
そのあたりをもう少し分かり易く記していただくと初心者の陥りがちな点が解明できると思いました。
実際にはヴォイス・トレーニングの先生に診てもらわないと個々の癖は分かりません。


第2章「曲に取り組む前に準備しておきたいこと」の「歌詞の重要性を理解する」は本書のねらいの一つでした。

外国語の歌詞を美しく発音することの大切さと難しさが述べられています。
中高生ですと、
英語の習得だけでも大変なのに、
他の言語で書かれた「外国語の合唱曲の楽しみ方」などはまだまだ到達できないでしょうが、
世界の素晴らしい合唱作品との出会いのために頑張って乗り越えて欲しいハードルだと思います。


「外国語のつづりの読み方と発音について」はあくまで基本的な注意にとどまっています。
様々な外国語の発音の習得は難しく、
お手本を聴きながら繰り返し練習するしかありません。
少しずつ着実にマスターするしかないでしょう。