思考を阻む映画。

この映画を見たのは、
今から二か月前で、
見た直後は頭が痛くなり
思考を適切に言語化することができませんでした。

あまりにショッキングな内容を受け止めることができなかったのです。


ですが、
作り物とはいえ、
個々のエピソードは、
日本のどこかで実際に起こっていることだと思い、

ただ批判するのではなく、
受け止めることができない自分自身にも問題があると感じていました。

だが、
「リリィシュシュのすべて」という映画を見て、
分かったことがあります。

この映画はあまりにも簡単に、
スピーディに、
死やイジメを描いていると感じました。

「リリィシュシュのすべて」は、
中だるみを感じた、
いらない描写が多いと多く指摘されている事からも分かるように
比較的物語は、
ゆっくり進みます。
ですが時間の流れに余裕があるために、
物語展開や苦しい展開をそれぞれに
思案したり、
受け止めることができると思います。


一方、
「渇き。
」はテンポの速い音楽と、
その音楽に合わせて激しく動く人々、
激しく切り替わるカメラワークが
考える余地と、
受け止める余裕を奪っているように感じられました。

くわえて、
鮮やかすぎる色彩と、
残酷な題材のアンバラスさがストーリ-展開を盛り上げることもなく
かえって逆効果に働いています。


この映画を私が賞賛できないのは、
ショッキングな題材の情報量が多いのに対して、

上にあげたように、
思考する余地を奪う構造を持っているからです。

好きな人は好きな映画かもしれません。
でも私は、
精神的に負担のかかる内容を、

思考を阻まれながら見ることに意味を見出すことができません。