日本の良いもの再発見

　本書は、
「暮らしの道具　松野屋」の店主　松野弘氏による本です。
氏は、
若い頃に京都の布鞄で有名な「一澤帆布店」でかばん制作の修行の経験をした経験がありますが、
後に、
家業の鞄問屋を現在の「松野屋」のような取扱い品目に代えて現在に至っているようです。

　本書は、
日本の昔ながらの荒物屋に並んでいた数々の手仕事の品について紹介した本ですが、
昭和の時代の昔ながらの埃っぽい雑多な「荒物屋」そのものを再現しているのではなく、
「きちんとした手仕事によってできあがった品々を発信する」という理念を持つ荒物屋の視点で紹介しています。


　本書の優れている点は、
単にきれいな写真入りで製品が紹介されるだけでなく、
いくつかのものについては、
その制作過程や製作者の説明や写真がある点です。
私は、
これまで接してきた品々がこんな工程を経てできてきたものとは認識していなかったので、
たいへん興味深く読ませていただきました。


　本書で紹介されている品々の中には、
「これは欲しい。
すばらしい」と思うものが多いのですが、
一方では「現代の生活状況では、
もうニーズが少ないのでは？」と思うものもあります。

　それでも私は、
プラスチックだらけ、
安物だらけの生活のクオリティの低さを痛感して、
これからは良い品、
自然素材のしんどくない品をも求めていこうと思いました。
日常にまぎれて安直に流れている暮らしぶりに再考を促す本でした。

　良書ですので読む価値が十分にある本と思います。