多様な現代文を精選〜日常空間から温故知新の思索を

建物の空間的配置、
橋のある風景、
しと降る雨の庭からの追想…。

施工的なコンセプトと、
折からの経験とが融合して蘇る在りし日のふとした出来事と、

また景色が重なりあってイメージの世界は織り成されてゆく。

宇宙を観る経験や、
地球を探る経験もまた光の瞬きや風水の乱流などから構成的に出現する、

渦巻くイメージの世界と随想的断章のスケッチであろうか。


本書はそんな日常空間から紡ぎ出された、
あらわれの世界をとりあげた問題文を、

解答例（あくまで参考程度）とともに過去25年分を収載した過去問集です。
多様な筆者の見解に触れつつ、

意識や潜在に関するキーワードを拾いながら、
目で追い、
川のごとき流れから意味をひもとき、

みずからの日常的遭遇や事象と重ねあわせることで、
現代文が身につくテキストとしても、

活用可能でしょうか。


両義性の哲学や生きられた言葉を唱えたメルロ・ポンティやベルグソンは、

また日常空間を対象に思索していたと考えられ、
いろいろな先達や同時代人による、

スタイルや言説から当代に還元することも多々あるのでは、
と思いました。

故きを温ね、
新しきを知るもまた、
その粋となる部分もありましょう。

精選された多様な現代文が並ぶ本書をうまく活用しながら、

それぞれの解答例を考えていただきたい、
と思いました。