入門本としては十分合格では。

　無粋な僕は、
これまで何度か遠州の手によるものを直に見てきたにも関わらず、
遠州好みの味わいどころというのが今ひとつ分からなかった。
本書は遠州好みを利休や織部の数寄と比較する形で説明しているのだが、
そのような系統比較の上で初めて彼の個性（綺麗さび）というものを掴めたように思う。
カラー図版が多いのも良い。

　
　本書は遠州茶道家元が関わっているため、
利休−織部−遠州という天下一茶道家達の系譜の中で、
遠州を持ち上げすぎな感は否めない。
だが、
素人でもパッと見で造作の狙いが伝わりやすい利休・織部と違い、
洗練されているが故に細部を鑑賞する目と知識が求められる遠州好みへの入門本としては、
それはそれで良いと思うので星は削らなかった。


　それにしても、
現家元の監修した「黄金の茶室」「プラチナの茶室」というのが、
どこまで本書で解説される小堀遠州の数寄に沿ったものなのか僕はピンと来ていない。
（どちらも某仏壇店が銀座や福岡で無料展示している。
）まあ、
美学というのものは時代によって変わっていくものではあるのだが。