そらそうよ

「社会心理学は、
実験や調査のような実証的手法で人の社会的行動の法則性を捉え、

その背後にある心理的な要因を究明しようとする心理学の一分野である。
他者の印象を
どのように形成するか、
他者とどのように関係を築いていくか、
他者や集団からどのような
影響を受けるかなど、
いずれも社会心理学の主要テーマである。
ただし、
これまでは
ことばに関する研究は社会心理学の主流とはいえなかった。
本書では、
こうした研究に
注目する。
……ことばの問題を社会心理学的視点から捉え直すことで、
何気ないことば
づかいと対人関係との深い関わりが明らかになってくるものと思う」。


　本書において取り扱われるのは、
ごくごく日常的なコミュニケーションのレパートリー。

　しかし、
そんな何気ない日常の風景とて、
真面目に考究すれば、
立派な学問的な知見と
して成立し得る、
それを示してみせた一冊。

　言わなくても文脈や相手を推し量ることで伝わることもある、
反面きちんと伝えている
はずなのに相手はまるで分かってくれない、
怒りの感情を表出させるのって常に悪いこと
なのか、
日本人は他国の人と比べて控え目なんてことが常識のように語られるけれども
それって本当のことなのか、
皮肉ってそもそも何なのか、
そんなことが本書の射程。

　普段のさりげない会話その他各種のコミュニケーションの背後にある構造やロジックを
多様な実験に基づいて解明していく、
そんな趣旨ゆえに、
導き出される一応の結論とて
そうした日常感覚の範疇を逸脱するものではない。

　当たり前から出発して当たり前へと舞い戻る。
本書のプリズムを経由することで世界の
見え方がまるで変わってしまう、
そんな類のテキストではない。


　もちろん、
この手の実験につきまとう各種の怪しさもないではない。

　例えば、
アンケートと実際の行動はしばしばあまりに違う、
という問題。
「道を聞かれた
ので教えようとしているのに、
相手は他の人と笑ってしゃべっている」状況を想定して、

相手へのリアクションを尋ねると、
30-50代の女性は一切命令形や卑罵表現を用いない、