日本人の想像を絶する劣等感と狂気を突き付ける本。

　例えば、
或る女性に恋い焦がれながらも、
自分はとても彼女と釣り合うような存在ではない、
との諦念から、
彼女に対して自らの思いをきちんと伝えることが出来ない男がいたとしても、
それだけでこの男を異常だと言う人はいないであろう。
しかし、
もし彼が､「俺は彼女が大嫌いだ！」と四六時中喚き続けるとともに、
事実無根の彼女の悪口を言い並べるとしたら、
これを精神異常者と判断する他ないのではなかろうか。
また、
或る分野において、
学識や能力の点でとてもこの人には及ばない、
と感じた人が、
その人を讃える言葉を素直に口にしないとしても、
心の狭い人間だな、
と思われる程度で済むであろうが、
もし彼が、
自分よりも優れた人を誹謗中傷する言葉を至るところで吐き続けるとしたら、
誰もが彼を深く軽蔑し、
その人格を疑うのではなかろうか。

　さらに、
これに留（とど）まらず、
これらの人が、
彼自身が内心憧れている女性への思いを率直に披瀝する人を､「そういう言葉を口にするな！」と執拗に攻撃し、
自分よりも優れている人を高く評価する言葉を述べる人を､「何故あいつを褒めるんだ！」と口穢（ぎたな）く罵倒するとしたら、
どうであろうか。
もはや一般常識では到底測り得ないまでの強烈な劣等感と狂気としか評しようがないのではなかろうか。
そして、
国中の人間がこれと同等の日本への劣等感に取り憑かれ、
これと同等の狂気の行動を取っているのがまさにあの国に他ならない。
本書は、
1972年生まれの著者が、
祖国のこのような醜悪な実態を日本の読者に向けて曝け出した本である。