読んだ後、自分の母語について誰かに伝えたくなる
外国人に日本語を教える凪子先生と生徒たちとの日々を通して、
日本語の奥深さを描く漫画エッセイの第3弾。
今回も彼らの痛快無比なやりとりに大いに笑わされ、
そしてその後わが身に引き寄せて、
自分の母語をいっそう愛おしく感じた次第です。
今回も学ぶことが多い読書でした。
「人々」や「佐々木さん」にある「々」は漢字ではなく、
「おどり字」といって先行する文字を繰り返すことを表す記号なのだとか。
また物品を数える際の「1ヶ」に使われる小さな「ヶ」は実はカタカナではなく漢字「个」の略字だということも初めて知りました。
物を数えるときに使う「个」の字が中国から日本に初めてやってきたとき、
「ケ」を斜めにした文字だと思われたのが由来だそうです。
最も興味深く読んだのは、
漫画などに登場する老博士が「私は博士じゃ。
何でも知っておる」という言葉づかいをするようになった背景についてのくだりです。
よくよく考えて見るとこんな話し方をする人は確かに漫画やアニメの世界でしたお目にかかりません。
実は、
「〜じゃ」「〜ておる」というのは関西風の言葉であり、
戦国時代までは文化の中心だった関西の物言いが、
江戸時代になってからは「伝統を大切にする年寄りや知識人」をイメージさせるようになったようです。
そしてこうしたセリフ回しが歌舞伎に生かされ、
現代では漫画などの「役割語」として引き継がれたというのです。
アニメーション好きが高じて日本語を学ぶようになった外国人も多いと聞きますが、
彼らがこうした老博士的な物言いをするおそれもないとはいえないわけです。
こんな風についつい見過ごしがちな日本語の不可思議で豊かな特質について目を向ける機会を与えてくれる一冊です。
さて、
「日本人の知らない日本語」シリーズは凪子先生の生徒たちが卒業するのを区切りとして一旦幕を引きますが、
次回からは外国で日本語を学ぶ人々に取材した「海外編」が読者に届けられる予定だとか。
これもまた、
今から大変楽しみです。
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