疫学の考え方を知るための入門書を

この本は、
「衛生公衆衛生学」となっていますが、
パブリックな領域を含む衛生状態
つまり疫学的な温床になる程度について、
おもに統計データに基づいて検討してきた学問であろうと思います。

年間有病率などという指標は、
例えば人口千人あたりに通年で何人ほどその有病者が存在しているかを数年平均のフローで計るもので、

いわば疫学的流れを重視した考え方です。
この点、
この本は疫学的観点から事象を分析し、
事例に考え方をちりばめる方式で書かれた、
初学者への平易な入門書であると思いますが、
各章間の統合性が多少弱く、
特集記事の寄せ集め的な面がなきにしもあらずでしょうか。
年度を追って改善の兆しがあるかと思いますが。

疫学は例えば、
イギリスにおける産業革命進行時がモデルとなっており、
細菌やウイルス等感染症への罹患者数を年単位で把握することにより、

常時ある病に冒されるリスクを考え、
時折勃発する急性蔓延性の状態はむしろこの尺度を狂わせるので、

攪乱要因として別途「事件」として扱う必要があります。

ヒトの移動がグローバル化するにつれ、
飛躍的に文明段階は進歩する一方で、
いぜん結核などは「健在」で、
また最近ではレトロウイルスによる院内感染、
ＳＡＲＳ、
エボラ出血熱といった重篤な感染症が流行るなど、
特に開発途上国でそれは深刻な様相を呈しており、
国連等の動きも気になる昨今ですから、
ぜひこうした入門書で近年の重要事例も含めて地域医療を取り巻く現状を学ばれ、
他の科目も含め、
今後の課題抽出に向けて学習を深めていただけたら、
と思います。