「我々」は何モノなのか？

　ググって妖精さんと人類の歴史を知る、
軌道エレベーターで月へゴー！、
月面上で知る驚愕の真実

　この9巻で、
「人類は衰退しました」完結です！この後、
短篇集などが出る予定はあるみたいですが――。
ここまでの話の中での伏線、
それがこの9巻で収束し「ああ、
そういうことだったのか！」と膝を打つ快感に読者は酔い痴れることとなります。
この構成力、
さすがです田中先生――。

　「わたし」ちゃん大活躍の巻ですが、
それすらも伏線の一部で実はあったりします。
表題で「人類は衰退しました」と言っているのに、
一方で今現在世界のあちこちで人類は生きながらえのほほんと暮らしています。
このよく考えると矛盾ある事実に改めて目を向けた時、
我々読者はこの特定の個人名を排した物語が、
「誰の物語であったのか」にようやく気付くこととなります。

　今回はSF的読後感で、
まるでアーサー・C・クラークの作品でも読んでいるようでした。
彼も軌道エレベーターや月や人工知能が、
とても好きな作家でしたしね。
田中先生、
執筆お疲れ様でした！短篇集の方も、
楽しみにしています。