日本史論よりも現代の「インテリジェンス」のあり方.

中国（政治・経済）分析で著名な宮崎氏の著書であるが、
本書は「中国人には絶対に理解できない 孫 子 の本当の読み方を、
信 長、
信 玄、
秀 吉、
家 康、
松 陰、
の 孫 子 活用法の歴史や最新の国際情勢を交えながら……徹底解説」（このページの上の「商品の説明」より）するものと言える。
その趣旨は、
「孫 子」の“情報”の収集と利用、
即ち「間 諜」ないし「謀 略」という広範な意義を有する“戦 略・戦 術”によって、
中国に対する日本の採るべき“安 全 保 障”政策を導き出すものと言って良い。
著者はかかる広範な情報収集と利用を「インテリジェンス」と捉えて、
そのあり方を“織 豊 期”の人物他の事績を中心に考察しながら、
「孫 子」の「兵 法」を紐解き現代日本の志向性を探るものである。
これまでの宮崎氏の著書と異なるのは、
「孫 子」の理論を具体的に考察（演繹）するために、
特に前記の“織 豊 期”の人物らの事績に多くを費やしていることである（第１章：秀 吉「備 中 高 松 城」ほか、
第２章：信 長「桶 狭 間」・家 康「関 ヶ 原」ほか、
第３章：秀 吉「小 牧 長 久 手」ほか）。
かかる宮崎氏の歴史的知見の深さは不明だが、
かかる歴史的考察（考証）において、
依拠史料等の見えない論述（断定・推測）や（劇画的）情景・心情描写が散見され、
歴史考察としては評価を躊躇う筆致が顕著である（例えば「小 牧 長 久 手」や「石 川 数 正」の“出 奔”を巡る情景・会話描写に関する148〜162頁など）。
本書における右のような歴史的考察は主論ではなく、
あくまでも「孫 子」の理論の考察資料として観るべきものであろう。
本書の構成・内容は、
前記「商品の説明」及び「目次を見る」に譲り、
以下では個人的に気になったトピックを指摘しておきたい。


著者は『信 長 公 記』の作者「太田牛一」について、
「『信 長 公 記』は……幾多の文献並びに関係者への取材のあとに書かれたが……その好き嫌いの個性が表れている。
太田牛一はもともと 丹 羽 長 秀……の右筆で、
後に 秀 吉に仕えた」（95〜96頁）とあるが、
これは通説とは異なる（端的には誤りである）。
まず「太田牛一」は 信 長 の 直 近 衆（馬 廻 衆）であったことはほぼ確実（通説）であって、
異論を差し挟む余地はないと言って良い。
これを裏付けるように『信 長