一気に読めて入門によい

私にとって初めての仏教本であるが、
すっと一気に読むことができた。
一気に読めることで禅あるいは仏教がおぼろげにわかってくるような気がする。
やさしく書いてあるが、
禅あるいは仏教の本質に関することがしっかり書いてあるのだろう。
自分も考え方を少し変えてみようという気にさせてくれる。

禅を人生に生かす５原則として、
１．莫妄想−余計なことを考えるな！２．一得一失−なんだっていい。
３．自灯明−他人のことはほっとけ！ ４．放下著−常識を捨てろ！５．竿頭進歩−がんばるな！と簡潔な言葉でまとめてあるが、
この−以下の言葉のみをみれば、
また本文中の、
がんばるな（私は今の日本人が平均的には働きすぎとは思わないが）、
医者などにかかるな、
苦しい受験勉強などするな、
単身赴任などするな等、
の文面、
或いはインド人が電車の遅れを気にしないのがよいと言っているととられそうな部分のみをとりだせば、
社会的に成功して経済的余裕もある年寄りの、
かってな言い方ととりたくなるむきもあるかもしれないが、
これは極端にまた簡潔に書いて印象を強くするためではないだろうか。
仏教の教えの本質は何かと探しつつ全体をよく読めば暴言ではないことがわかる。
がんばるかがんばらないか、
単身赴任や受験勉強とどう向き合うかなどは、
各人がそのときにおいて自由な心をもって決めること、
これが本書の言う、
自灯明、
また禅の基本精神「こだわらない」、
とらわれない、
であろう。

本書は新潮文庫の「しあわせになる禅」および三笠書房知的生きかた文庫の「もっと自由に生きるための｢禅｣入門」とほぼ同じ内容のリニューアル版であるが、
あとがきは宗教の必要性を記された新潮文庫本、
三笠書房本のほうがよかったと思う。