飛翔、

　シンプルなロックバンドから始まり、
新しい手法に挑んでは、
必ずその場で到達できる最高の完成品を創り上げる。

　先人達の歩いた道を 足跡を頼りに同じように歩いていく。

　決して近道はしない。
一歩 また一歩としっかり踏みしめる。


　「ピロウズ」という轍の路傍に、
燦然と輝く何本目かのマイルストーン。


　溢れる挑戦心が生み出した 確かな名盤だ。


　前作より取り入れ始めた、
テクノサウンドやボイスエフェクトなど エレクトリカルな手法が、
中毒性の高いポップセンスに自然に入り込んできた。

　ロックが持つ骨太なイメージは薄められてしまったが、
これが悪くない。

　はかなく軽いサウンドが入ることで、
かえって ３ピースの生み出せる「音」を激しく感じさせてくれる。


　詩の世界も変わった。

　「理解されなくってもいい 俺は俺の道を歩いていくさ」というストイックさに加え、
「分かるところまで行ってやろうじゃないか！」と意気込みを感じるようになった。

　孤高の集団が まさにSimple Skyに向けて飛び立ったようだ。


　その前向きな詩は、
スピーカーを突き抜けて力を与えてくれる。

　特に『バビロン 天使の詩』『カモン・ゴースト』の勢いは ハンパじゃない。

　天に向かって 自然と拳が突きあげてしまう。

　『ロボットマン』や『サンキュー・マイ・トワイライト』の「譲れない世界にいる淋しさ」を前面に押し出した世界も顕在だ。

　他にも、
つい卒業文集を探してしまいたくなる 『白い夏と緑の自転車 赤い髪と黒いギター』 などなど…
　テーマは幅広く、
新しく「ピロウズ」に触れる人にも聴きやすい仕上がりになっている。


　個人的には、
猫のように勝手気ままな 『Winona』 が、
２年近くも心の中にあり、
忘れられない思い出になっている。


　嫌なことばかりで憂鬱な人、
答えを探して心がくすんでいる人。

　ぜひ、
この一枚に触れて欲しい。

　くすぶっていた魂が、
再び燃え上がるのを 感じることができるはずだ。