凛とした椿花、郡山に在り

常識に捉われることなく、
その行動は型破り。
かつ人を観る目はめっぽう鋭い岡山藩藩主、
熊田治隆率いる参勤の旅を描い
たオノナツメ作時代劇第２巻。
本巻では郡山〜伏見への旅路でのエピソードが語られる。
急展開は見られないものの、
１巻
ではベールに包まれていた治隆の人となりが徐々に明らかにされていくのがこの２巻と言えるだろう。


詳細は語らないが、
郡山にて描かれるある一人の｢椿花｣と治隆との物語が素晴らしく美しいことを述べておく。
１巻でも描か
れた様に、
治隆の威厳と人を凝視する独特の｢ぎょろ目｣は視られた者を委縮させる程の圧力がある。
ある縁で治隆と見知る
こととなったこの女性、
治隆の視線に屈せぬ程の強さと静けさを持ち併せており、
治隆を｢熊田臭い｣と形容するのだが…その
いきさつや、
それを受けた治隆の言動が前半の見物となっているので、
是非読んで欲しい。


他にも、
お堅い性格の和泉は今回も治隆による振り回されっぷりが気の毒な程だし、
治隆の側近である山和木の伊達男っぷ
り、
九作と馬｢百楽｣との絶妙な掛け合いも健在。
派手な演出は皆無なのだけど、
コマを凝視する程にこみあげる可笑しみがあ
る。
後半治隆と山和木が望む湖の情景の美しさもこの作品ならではの味わいで必読。
台詞回しや情景の美しさ、
間の取り方等
ここまで徹底した細部への拘りを感じさせる漫画も珍しいと思う。


和泉・治隆・山和木・九作…個性的な登場人物と一緒にのんびり旅をしている気にさせられる作品。
次巻以降も彼らの旅先で
待つだろう素敵なエピソードが楽しみだ。