もしや…

上下巻を読んでみての感想。

最初のほうは、
表層的なお遍路体験記っぽいものかなと思いきや、

けっこう深刻な内面状況でお遍路してることが語られ始め、
話はどんどん暗くなる。

見所は上巻[14番]で坊さんから「君はどんな人生を送ったとしても必ず後悔する！」と言われたり、

[17番]で憧れの漫画家になったはいいが、
さっぱり売れなく切られ、
いまさら引き返せない苦悩が述べられる所である。

明らかに私小説っぽい雰囲気で、
他人事で描いてはいない。


下巻はお遍路に纏わるいろいろな話が主軸となり、
多様な親切話、
納経帳でゼニ儲け、
ゲイのおじさんから誘われる話など、
お遍路に詳しくなること請合いで、
通俗的イメージとはズレた実態も知ることが出来る。


この物語のテーマは、
行き詰った人間が、
その行き詰まりを根本的には解決出来ないながらも、
何かを悟るということだ。

その何かは名状し難いが、
そこに人間の成長があるのは間違いない。


ちなみに、
最初の二、
三話読んだあたりで、
そういえば、
あの人もお遍路して、
ウェブに書いてたよなあと思い出して調べてみたら。

やっぱり。
作者は國津武士さんでしたか。

このようなマンガを描けたのだ。
漫画家になった意義は十分あったのである。
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