不完全燃焼

平然と恋人のもとに行く夫。

何日も帰らぬ夫を待ち続ける妻。

父母の些細な変化や顔色を敏感に感じ取る
幼い姉弟、
拓人と育実。


言葉の発達が遅い五歳の拓人は
周りと同じようには溶け込めない。

自然の中での小さな生き物たちとのふれあいは
拓人には欠かすことの出来ない日常であり
意思疎通は彼だけの特別な世界。

そんな拓人を庇護しようとする
小学生の姉、
育実が何とも健気です。


物語は拓人の世界を中心に
登場する女性たちの恋愛なども
描かれています。


拓人は思うように会話が出来ないけれど
観察力が鋭く育実も感受性がとても豊かです。

子供らしさと子供であるが故に感じ取ってしまう
僅かな変化。

父の浮気が家庭にもたらすもの。


たまにしか帰宅しない父、
何も言わない母、

いつもと違う部屋の空気。

大人の身勝手さの中に、
ほおり込まれた純真無垢が
それでも変わらずにいてくれたことに救われます。


面白かったです、
最後のページを読むまでは。

何故か突然、
５行の中で拓人と育実が成人し
回想後、
物語は完結します。

その後、
二人が、
どのように成長していったのか
家庭問題は解決したのか、
どうかさえも書かれていません。


登場人物が多くエピソードも描かれている為
終盤まで何に焦点を当てたいのかが分かりにくく
肝心の結末が中途半端な感じで終わり
スッキリしませんでした。

又、
拓人の世界観や幼さを表現する為なのか
彼の場面のみ平仮名で書かれてあるので
読みづらかったです。