財務分析に事業経済性という視点を持ち込み、経営分析として提示できている点が素晴らしい

新書のお手軽さを維持しつつ、
財務分析の領域に事業経済性（規模・範囲・密度の経済、
ネットワークの外部性）
という視点を持ち込み、
経営分析のノウハウとして提示できている点が素晴らしいと思います。


確かに、
事業経済性は学問の世界では目新しさがあるわけではありません。

しかし、
分析の現場では、
教科書的な財務指標を用いた上で、
過去の良かった時と比較してどうか、

ビジネスモデルを無視した十把一絡げの同業他社平均値と比較してどうかという表層的な内容で終始するケースを見てきました。

ですから、
事業経済性と財務分析を結び付けて提示できている点は意義のあることだと思います。


また、
複式簿記の重要性を明確に示している点も評価したいと思います。

戦略系コンサル出身者は簿記の理解が浅い人が多いように感ずることがありました。

こうした簿記/会計の重要性とその限界を一流の戦略系コンサル出身者が認識し、

それを著書で明示しているというのは大変意義深いことだと思います。


冨山氏の著作のファンの方が期待する、
大所高所の骨太の議論や現場の情理の世界を描いた生々しい経営を
相対的に感じることが出来ませんが、
それでも一読の価値があると思います。