「読み応えのある競馬歴史小説の傑作です」

本書を読みすすめていくうちに
その時代に深く引き込まれてしまいました。


ひとの力ではどうすることもできなかった
翻弄という色のない言葉の輪郭が
何度も何度も静かに浮かび上がってくるのです。


特に同じ女性として
心の琴線が激しく震えたのは
斉藤すみの章でした。


この時代
現代の競馬界では考えられない性差別があり
心無い言葉を浴びせられた
純朴なすみの気持ちを思うと
理由のわからない悲しみはもちろん
胸をつぶす息苦しさや
涙をこらえた時のように
のどの奥が締めつけられ痛みさえ感じるほど。


競馬を愛する女性にも読んでいただきたいです。


近代競馬の黎明期を語るうえで
かかすことのできない人物である
函館孫作や前田長吉も登場させており
時代背景や世情が惜しみなく書き記されていて
とても読み応えのある
新しいタイプの競馬歴史小説だと思いました。


登場人物の生涯や軌跡が
不思議なリアリティーの中で巧みに結びついていて
『虹の断片（かけら）』というタイトルの意味を
私なりにかみしめています。