琵琶法師の語りに注目して平家物語を読む

文学者である筆者が、
平家物語の背景にあるいくつかの側面を解説している。

平家物語の全体を通したストーリーは、
この物語の成立した時代の、
比叡山における時代認識をもとにしていると、
筆者は語っている。
慈円の『愚管抄』は、
まさにそうした思想をベースにしている。

また、
筆者は、
いわゆる文字としての平家物語だけではなく、
琵琶法師による語りとしての平家物語に注目している。

文字による成立以前に、
語りとしての平家物語が成立していたのではないか、
という柳田國男の説を紹介しながら、
平家物語の普及において、
琵琶法師のパフォーマンスが、
いかに重要なファクターであったのか、
解説している。

京都において、
悪霊などから都を守る役割を担っていた比叡山が、
琵琶法師による滅亡した平家の霊を弔うことを意図して、
平家物語を企画した。
しかし、
その影響は、
企画者の意図を遥かに超え、
時代を超えて、
歴史と人間の関わりを考えさせられる壮大な物語へと、
変貌を遂げた、
といったところだろうか。