題材はユニークだが……

　書名の「架空通貨」とは、
長野県田神町の企業が発行する社債のこと。
この町では社債が振興券という名前で、
日本銀行券と同じよう流通させられている。
本来信用に基づいて流通する紙幣が、
企業城下町を形成する一企業の横暴、
脅迫、
権力で無理やり流通させられている。

　題材の面白さから、
かなり読まされる。
ところが終章の出来が良くない。
一気に興味が薄らいでしまう。
末路の見えた展開が続く。
もう一つ、
主人公などの人物造詣が弱い。
元商社マンとはいえ、
高校教師が事件に係わって行く動機、
バイタリティーが不自然。
女性についても描き切れていないようだ。

　乱歩賞受賞作の「果つる底なき」の方が面白かった。