実

ソロとしての活動休止期間を経て産み落とされたファーストアルバム。
ソロ期を彷彿とさせるような解り易くキャッチーなJ-POP的方法論で作られた楽曲は余りなく、
ソロ時代を求めているリスナーには取っつきにくさもあるだろうがサウンドとしてはぐっと成熟している。
ソロ期はパンク系の楽曲の多くが本人作曲で無かったことも含め、
プロデュースチームのコンプライアンス下にあった様にも思えたが、
ことにロックの文脈に於いてはその解釈の古さが気にもなったのである。
今作ではハードロッキンな「神様」や激しい歌唱を聴かせる「バイバイ」のような楽曲もあるが、
全体を通しては90年代後半以降のポストロックを咀嚼したふくよかな音像になっている。
13曲70分という構成はやや散漫な印象も受けるが、
それもまた信頼できるメンバーを得たyuiのイマジネーションの発露というものだろう。
「ギターを抱えたロック少女」はもうここには居らず、
ひとつのロックバンドとしての音が鳴っている。