君が愛を語れ

今の彼を取り巻く状況は、
本人もその周囲も誰一人として望んでいたものではなかっただろう。

世論は成功者から転落した犯罪者として彼を取り上げ、
ネット上の匿名の人々はかつての名曲を面白おかしく揶揄する。

一部の誹謗中傷によって、
彼の楽曲への評価は彼の人間性とともに地に落ちようとしている。


しかしどういうわけか、
今のこの時期に聴いた彼の歌声はこれまで以上に私の胸を強く揺さぶった。

このＣＤの中のいくつかの曲を聴いたとき、
自然とあふれる涙を止めることができなかった。

これは彼の現状に同情したからでもないし、
彼の失墜を悔やんだからでもない。

彼の曲に、
彼の詞に、
彼の歌声に、
純粋に感動したのだ。
今までにないほどの激しい共感を伴って。

彼もやはり生身の人間で、
貫禄あるパフォーマンスの裏では人並みの弱さを隠し持っていた。

自信と情熱とプライドの狭間に見え隠れする孤独や不安や焦燥が、
どの曲の端々にもリアルに感じられた。

今回の件で、
一人の人間として抱えていた逃れられない苦悩が彼にもあったのだとあらためて思い知ったのだ。

皮肉にも、
ここにきて初めて“ＡＳＫＡ”という人間を等身大で感じることができたのだ。


このレビューは彼の罪を擁護するものではない。
彼の犯した間違いや裏切りは消えない。

しかし、
一つの過ちによってその人の全てを否定するようなことは私にはできない。

それが決して許されることのない過ちだとしても、
彼を侮蔑的な態度で見限ることなどできない。

たとえ二度と表舞台に立つことが適わないのだとしても、
彼が辿ってきた軌跡に敬意を払わずにはいられない。


今あらためて彼の曲を聴いて感じた、
幾ら言葉を重ねても語り得ないこの感動は、
私にとって動かしようのない事実なのだから。
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