これからも大切に読んでいきたい1冊
インド系2世アメリカ人、
ジュンパ・ラヒリが、
自分のルーツへ敬愛と愛情をこめた短編集。
インド系アメリカ人の物語を軸に、
9つの物語で構成されているが、
そのどれをとっても共通の抑制のきいた端正な文章もまた、
印象的。
インド系2世同士の結婚の行く末をテーマにした第一話と、
アメリカという土地で自分の道を切り開いてきた移民1世達に対するオマージュ、
の第9話。
この2話が特に印象的といっている人が多いようだ。
個人的にも、
9話めの、
『3度目で第3の大陸』を非常に気にいっている。
それにしても、
9つ全てに漂っているインド文化の薫りは、
時にはっとさせられる
『これってアメリカで起きてることなんだ。
』
って。
つまり、
アメリカ文化の周縁でインド文化がこんなにも根付いているって事に気づかされる。
白人と黒人の対立構造とは違った次元でインド文化という衣を羽織って生活してる人がいるって事実に(当たり前のことかもしれないんだけど)、
そしてその文化の深淵さに驚いてしまう。
そのいい例が、
この本のひとつの特徴でもある料理の描写。
覚えきれないくらいたくさんの香辛料を使ったインド料理は、
毎日繰り返される。
それは、
日々繰り返される日常であるがゆえに、
1年が365日ある分だけ、
その深淵さははかりしれないものがある。
おそらく、
そんな風にアメリカという土地でインドの文化は根付いていったのだろう。
本当にこの本を吟味できる人達は、
もしかしたらインド系移民に限られているのかもしれない。
でも、
自分としては文化を紡ぐということに想いを馳せながら読むことが楽しい。
そして例えば第1話の様に、
異文化で起こる夫婦間のできごとに普遍性をみた気になっていたりもする。
大学生の頃に読み、
読書ってこんなに楽しいものか、
と思った。
それから6年間原書、
和書、
ともに繰り返し読んでいる。
読むたびに心地よい。
きらきらしてる、
1冊。
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