高校数学からのレベルアップ

　行き過ぎた「ゆとり教育」に反対して20年間も数学啓蒙活動を続けてこられた
芳沢光男先生による「生きた題材で学ぶ数学」の集大成。


　この本には、
著者が大学での講義や、
のべ200校にわたる小中高の「出前授業」で
生徒達に面白いとよろこんでもらえた問題の中から、
すこしレベルアップされたものが
載っています。
ここで「レベルアップされたもの」と言っているのは、

高校数学（微積分の基礎、
平面幾何学など）を越えて、
新しい数学の分野へ
踏み込めるような工夫がされているものということです。


　ランダムに並んでいる、
一見初等的なように見える問題も、
注意深く見れば、

群論、
グラフ理論、
体論と符号理論、
線形計画法、
推移確率行列、
金融工学の
オプション取引、
位相空間、
不動点、
アルゴリズム理論、
ゲーム理論などへの
架け橋（あるいは入り口）の問題として選ばれています。
当然のことながら
このわずか200頁の本ではなかなかすべてを説明しきれず舌足らずの面もあります。

また、
この本を読んだからと言ってただちに数学の力が増すわけではありません。

しかし芳沢先生の教育的配慮は、
もしこれらの問題のどれかでも読者が興味を持って
さらにそれに関連したことを勉強したいと思えば、
そこに参照されている先生自身の
旧著や他の本を読んで先に進む道を示してくれていることだと思います。


　常々数学って何の役に立つの？って疑問に思っているひとが多いと思いますが、

芳沢先生は、
この本で、
高校数学から少しレベルアップすると、
なぜか楽しく、

「クリエイティブに生きている気持ち」になれると言っています。

私もさらに勉強をすすめてそういう気分を味わってみたいと思います。