魔法騎士のはじめかた 許されざる恋路、むしろ全力で回避 (角川ビーンズ文庫) の感想

時々クラスの友達を見ながら「あー、みんな可愛いなあ、なんかあたしおばさんみたいだなー」と思ってしまう女の子であればおそらくかなりすんなり読める筈。主人公は１５歳、ただし、異世界に飛ぶにあたって２８歳が１５歳の体に入っている、という設定。イケメンに囲まれていてそれなりにフラグが立っているにも関わらず、どこまでも視線は「わー、可愛い！」であって、（ああ、これこそが２８歳喪女の理由であったか！）との説得力が。
ストーリーはテンポよく、テンプレ的と言えばそうだけれど、うまく進んで行く。コメディ要素も良い感じ。

若干のネタバレを含みます。

２８歳だけど若く見えるから学園に通っちゃう、
２８歳だから断酒出来なくて、ついついアルコールを窃盗しちゃう、
喪女だからオタク、イケメン好きを暑苦しく語ってしまう…等々、
一体どの世代をターゲットにしているのか、頭を抱えたくなる一冊です。

実際、世間の２８歳喪女がこれだけ痛い人格だとは思いたくないし、
（大人になって学園生活に憧れる、のなら年齢詐称ではなく若返った設定の方がまだしっくりくる）
はたしてこんなヒロインに憧れる１０代のお嬢さんはいらっしゃるのでしょうか。

読後はひたすら気持ち悪かったです。
魔法世界の設定（ハ○-ポッター設定に近いところが多々見受けられますが）はまだ夢があり、良いとは思えるのですが…。

ビーンズ文庫の作品ですが、中身は今はやりのネット小説のような作風です。
テンションの高い一人称で物語が進み、オタクネタやパロディネタが多用されています。

内容は冴えない喪女のヒロインがある日神様にチートをもらって異世界トリップをして…………
というネット小説によくあるテンプレで、特に目新しい部分はありません。
ヒロインは魔法学園に入学し、個性的なイケメンたちに囲まれた学園生活を楽しむことになります。
そこまではいいのですが、イケメン達が皆十代学生なのに対して、ヒロインは元日本人の２８才OLです。
しかも学園に潜り込むため、１５歳の少女だと年齢詐称しています。
イケメンたちもそれを怪しむ様子もなく、あくまでヒロインを１５才の少女として扱い接してきます。

…………正直、その状態でいくら恋愛フラグをたてられても萌えられないし、気持ち悪いです。
２８才のヒロインと十代のヒーローの恋愛の時点で人を選ぶ気がしますが、
そこにさらに年齢詐称も加わっているので私は無理でした。
イラストやイケメンの個性的なキャラ、中二要素の入ったファンタジーな世界観など良い部分もあるのですが、
それらをすべてぶち壊しにするヒロインの破壊力がすさまじかったです…………