名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書) の感想

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参照データ

タイトル名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)
発売日2014-07-17
製作者中野 京子
販売元光文社
JANコード9784334038113
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購入者の感想

週刊誌のような文章なのですが、却って解説される絵とのギャップが鮮明で事実が浮かび上がってくるような面白さがあります。文芸春秋の巻頭に連載されているものですからやむをえないかも知れません。レーピンの「ボルガの船曳き」の解説は踏みにじられる人びとと書いてありますが、そもそも当時からロバや馬は使われていたのですからそのような事を人間にさせるには理由があったはずですがそれは週刊誌の文章ですからすっとばしています。平易に見ると内陸部の商人らが自分の積み荷を載せた船を引っ張っているように見えます。また強制労働であったとしても内陸部での塩等の不足から盗みを働いた人びとへの罰であったと評価もできるはずです。ラスプーチンの項はより扇情的な文章になっていますから、写真週刊誌であると思えば良いのではないでしょうか。ラスプーチンその人は史実だけを追うと、日本でよくある僧の上人や修験道のような人であったようです。持統天皇の寵愛を得た道鏡もそのような評価を受けていますね。ラスプーチンはニコライ二世が京都を訪れた際に仏教僧が政治に於いて大きな役割を得ている事を知った事から大衆の無意識な意見の代表者としての人物として政策に大衆の意思を反映させようとした結果として評価すべきであるのでしょうが、あまり日本の文系エリートは関心が無いようです。ラスプーチンがアレクサンドラの代理人として民衆と「農園」で会っていたと考えるのが合理性があるようです。政権末期には民衆から選抜された大臣が登場します。中野京子氏が描く「怪僧」が政敵から無防備に残虐に殺される描写は、肉体的に常軌を逸した奇人として描いているのですが、皇帝の支持基盤が大衆であった事。大衆は皇帝に軍務を通じて忠誠を示していた事。貴族と皇帝は人権で何世代に渡って対立していた事。アレクサンドラはイギリスのヴィクトリア女王の孫として宮廷から浮いていた事。(バルチック艦隊はイギリスの漁船を意図的に砲撃している)このような事実から、ラスプーチンの最後はキリストの受難のような政敵にあえて殺される事が目的であったように考えられます。終章は戦争非難ですが、国内の内紛でヨーロッパ各国が国民の統合の為、内政としての外交の帰結としての対外紛争が、科学の発展の為に未曽有の被害をもたらして収拾がつかなくなる事態を著者は「王権神授を信じ~平伏されるのに慣れ切ったニコライが~」と描写し

以前、ロシア旅行の経験があり、美術館もエルミタージュとトレチャコフに行きました。
ロシアは実は隣国。国境線が接しているにもかかわらず、日本人の心からは遠い国です。しかし、西欧諸国とは一線を画す「極東」の国でもあります。メンタリティーに日本人と共通する何かがあるのか、絵画は私の心に強い印象を残しました。向こうで見た名画もいくつか掲載されており、この本を手に取りました。
ロシアの歴史を本で読んでいたせいもありますが、とても興味深く、一気に読んでしまいました。ロマノフの物語はその後のソビエト連邦、そして現在のロシアにつながる壮大な、自然環境の厳しい広大な領土と農奴制という過酷な奴隷制度を下敷きにした王朝の物語です。
ロシアを旅する予定のある方、行かれる前にぜひご一読をお勧めします。

 ロマノフ家といえば、高校生のときにピョートル大帝とエカテリーナ2世の名前を世界史の教科書で見ており、そして、日露戦争のときの皇帝ニコライ2世の名前も知っていましたが、しょせんその程度の知識の私にとって、最初「この本は読み通せるのか」と不安を持ちながら本書を手にとりました。
 しかし、読み始めてみると、筆者の整理能力・筆力のすばらしさと、絵画で人物や時代状況のイメージができることで、どんどん読み進めることができ、一気に読んでしまいました。

 私は、ロシア史について細切れの断片的知識しかなかったのですが、本書を読んで、ロマノフ朝の時代の300年間を一つの流れとして学ぶことができました。点の知識が線の知識になった感じで、とても勉強になりました。
 そして、親族間で殺し合ったり、幽閉したりというようなロシアの権力争奪のすさまじさを、この本で初めて理解でき、「すごいとしか言いようがない」と驚きました。

 本書は、興味深く読めて、どんどん惹きこまれ、しかも勉強になる本です。
 取り上げられている絵画も、単なる皇帝たちの肖像画ではなく、その人となりや境遇、時代背景がわかる興味深い作品を選りすぐっています。
 ていねいに書かれたきちんとした本であり、お薦めできる良書と思います。

【内容(ネタバレ禁止!)】
「呪われた王座」を300年も継承し、悲惨な終焉を迎えたロシアのロマノフ王朝の歴史を、美しくも「恐い絵」を鑑賞しながらたどって行く。歴史的事実にありながら、著者得意のゴシップ文体で、波乱万丈、ワクワクドキドキのドラマが繰り広げられていく。
【ささった言葉】
・(王の後継者に)指名された者はかえって危険にさらされた。ロマノフ王朝は、弟が姉を、夫が妻を幽閉し、父が息子を、妻が夫を殺してきた歴史だ。
・今たとえどんな地位にあろうと安心できない、いつ引きずりおろされるかわからない。いや、すでにもう権力は手の中にないのに、気づいていないだけかもしれない。しかも政争に敗れた者の運命は、ヨーロッパ先進国の場合とは比べ物にならぬほど残酷だ。
・ソ連時代のジョーク集には、夜明けにドアを乱暴に叩く音で死ぬほど怯え、逮捕者が自分ではなく隣人と知るや「人生最高の幸せを感じた」、などというブラックジョークがたくさんある。
・これでは誰も彼も疑心暗鬼に囚われ、寝首を掻かれぬ先に敵を陥れねばと、絶えず陰謀をめぐらすことになる。男も女も、君主も臣下も。
【教訓】
国が違うとこれほどまでに違うか。。。隣国とは思えぬ酷い話。歴史こそ民族の文化の源であり、その経験が基本的考え方「常識」になるとすると、さらに恐ろしさは募る。
日本人が幸運なのは、リーダーの生き様に尊敬すべき点が多いこと、さらにその結果、リーダーたる者にはタダ者でない立派さが要求される、という点だ。もちろん、ロシアにも立派なリーダーは居るのだろうが、その代表としての王家がこの様では、得られる教訓が健全なモノになるはずがない。権力を持つ者がその欲望を剥き出しにするとどうなるか、目を覆いたくなるような人間の醜い部分が、ここに晒されている。子どもには見せたくない歴史だ。
厳しい気候と歴史を耐え抜いてきたロシア人と、美しい自然に育まれ、立派な先人たちに導かれてきた日本人とが分かり合うには、かなりの距離がありそうだ。少なくとも、自国の常識を相手に押し付ける愚は、犯すべきでない。気を付けねば。

相変わらず読みやすい、テンポが良い、エピソードも面白い

これまでは、苦手意識の強かった歴史画ですが、中野京子さんの
手にかかると不思議なほどに、魅力的になります。

中野京子ファンには従来通りの、満足感を。
いや、それ以上に、今回はロシア中心ですので
幅が広がります。やはり面白い。

美術好きには、絵を見る楽しみ、読み方が
エピソードとともに、すんなりと頭に入ります

歴史好きには、様々な絵とともに、歴史が
縦横無尽に語られて、時折、他の推薦本を
紹介しておりちょうど良い
(井上靖「おろしや国酔夢談」など)

それから、ドストエフスキー読み、トルストイ読みには
その背景となる歴史、エピソードが、さりげなくちりばめられ
「へー」と思い、他の本も読みたくなる内容です

佐藤優ファンなんかだと、また別の角度で肩の力を
抜いた、ロシア談義・歴史を楽しめると思います。

お勧め!!

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