教育 (思考のフロンティア) の感想
参照データ
タイトル | 教育 (思考のフロンティア) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 広田 照幸 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784000270076 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 一般 |
購入者の感想
小冊子ながら中身は濃い。新自由主義的な教育改革路線にどう向き合い、どのような代案が可能なのかという困難な課題に著者は取り組む。個人化とグローバル化という現代社会の根本的趨勢が、新自由主義の教育改革プログラムに説得力を与えており、理論的には「一人勝ち」のように見える。その理由は、(1)国際的な経済競争に負けないエリートの養成という明快な目標。(2)制度に対する個人の不満を市場原理によってソフトに調整し、個人や個性の尊重を謳っている(ニーズに応じたサービスとしての教育)。(3)その一方で、モラルや規範の再構築を訴え、犯罪や非行の増加に対する人々の不安に答える・・など、我々の「個人」への肯定感情とグローバルな国家的課題との両方に軸足をもつからだ。
だが、新自由主義の教育プログラムが近代社会の生み出した「個人化」の延長線にあるならば、先進国の少子化もまた「個人化」の必然的な帰結である。それがいずれ経済成長のネックになる可能性もある。結局、人間の望ましい育て方である「教育」は、社会の望ましいあり方と相即的に語るしかない。新自由主義への著者の対案はまだ抽象的だが、「教育の自律性」という幻想に囚われない冷静な分析は、我々がこれから考えるべきことについて多大の示唆を与えてくれる。
だが、新自由主義の教育プログラムが近代社会の生み出した「個人化」の延長線にあるならば、先進国の少子化もまた「個人化」の必然的な帰結である。それがいずれ経済成長のネックになる可能性もある。結局、人間の望ましい育て方である「教育」は、社会の望ましいあり方と相即的に語るしかない。新自由主義への著者の対案はまだ抽象的だが、「教育の自律性」という幻想に囚われない冷静な分析は、我々がこれから考えるべきことについて多大の示唆を与えてくれる。