間主観性の現象学 その方法 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル間主観性の現象学 その方法 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者エトムント フッサール
販売元筑摩書房
JANコード9784480094483
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 論理学・現象学

購入者の感想

 現象学の最大のネックとも言われる間主観性問題(他我問題)をフッサールが正面から論じた本。あれ、フッサールの著作にこんな本有ったっけ?と最初は思ったのだが、どうやら1905年から1935年までの草稿を纏めたものらしく(フッサール全集の13〜15巻)、アリストテレスの様に文体がレジュメ形式になっている箇所も多い、未完成のアンソロジーらしい。章同士の繋がりが希薄だったり重複が有ったりもするが、纏め方が良いのか総じて流れを読み易い構成になっている。

 最初に身体に局在化され、時間の中で定位される自我の在り方を140頁以上に亘って長々と論じてから(「現象学の根本問題」)、さてそんな自我が自分と同じ様にそれ自身の身体に局在化され、統握を行う自我が他にも存在すると云う事態をどの様に認識するのかが更に長々と論じられる。訳文の所為もあるのだが、文体は非常に生硬で冗長で読み進めるのに難渋するが、言っていること自体はそれ程複雑なことではない。『デカルト的省察』を楽しく読めた読者であれば、本書のテーマを把握することは難しくないだろう。

 「感情移入」がキーワードとなっている時点で、あ〜あ、やっぱりか、これがフッサールの限界かとも思ってしまうのだが(幼児や動物への感情移入を論じる等、一応頑張ってはいる)、興味深いのは自我をモナドに喩えて「無限に多くの窓を持つ」と表現していること。他者認識の現象学的還元に於てこれがどれだけの重みを持つのかは然程詳しくは述べられず(例によって具体例に乏しい)、何とももどかしい感じもするのだが、この続きがまだ有るらしいので、続刊での今後の展開に期待、と云うところだろうか。ヴィゴツキーやバロン=コーエン等を読んでしまうと、飽く迄自我(自我極)に拘るフッサールの姿を見せ付けられると、何とも苦笑が浮かんでしまうのだが、理性を救済しようとした執念深い知性の足跡として、本書は間主観性問題を論じる際には避けては通れないテキストを含んでいると言えるだろう。興味の有る方は取り敢えず手に取ってみるべし。

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