池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」 の感想

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本書はわかりにくい「資本論」を見事にわやりやすく噛み砕いて解説しています。
実際に高校生に集まってもらって授業形式で解説したものを基にしてまとめており、
その際に神奈川大学の的場昭弘教授などの専門家のアドバイスをもらったということです。
的場教授の『超訳 資本論』シリーズも読みましたが、皮肉にも本書の方がはるかにわかりやすかったです。
的場教授は『資本論』の専門家ではあっても、著者のような解説の専門家ではないから当然かもしれません。

　栄養満点だけど消化が悪い食べ物と、多少栄養は損なわれているがおいしく調理された食べ物、
どちらがいいかは一概には言えません。
健康で胃腸が頑強な人には前者がいいかもしれないけど、人によっては後者の方が結果的に体にいいこともあるでしょう。
本も同じだと思います。
途中で挫折する難解な原典よりも、最後まで読み通せる解説本のほうが、結局は得るものが多いこともあります。
また、解説本を読んでから原典を読むと、消化が悪かったものが簡単に消化できるようになっていることもあります。

　本書について「インチキ」だとのレビューがあります。
136ページの原典からの引用部分の中に、原典にはない文を付け足しているという理由ですが、
ちゃんと原典の第1巻第3篇第7章の最後にあります
（僕が持っているのは1969年の岩波文庫版なので多少翻訳文は違っていますけど）。
「中略」と入れていないことが手落ちと言えば手落ちですが、
いちいち原典と比べながら読むことを想定して書かれている本だとも思えませんし、
学術論文でもありませんから、いいんじゃないでしょうか。
以上、明らかに誤った指摘だったので補足しておきます。