後白河上皇 「絵巻物」の力で武士に勝った帝 (PHP新書) の感想

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タイトル後白河上皇 「絵巻物」の力で武士に勝った帝 (PHP新書)
発売日販売日未定
製作者小林 泰三
販売元PHP研究所
JANコード9784569804163
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

著者は画像処理技術で日本美術作品のもともとの姿を復元する「デジタル復元師」。後白河プロデュースの絵画を多く扱った体験から、「歴史学者ではなく、美術史家でもない」著者が、「直接古文書に記されているものではな」く、「各学会の最新情報を知った上のものではな」い歴史的記述に、絵巻物や屏風から「直接教わった」「専門家でも知り得なかった情報」をプラスして後白河の人間性の解剖を試みる。

後白河策略家説を否定し、少年の心を持ち続け直観で行動し人気があったとするまでは類書でも同様の見解を目にする。生を肯定した人だと言うのもわかる。しかし、本書はさらに後白河はニーチェが説くところの超人だとし、後白河的なものが現代の閉塞感を打破するヒントとまで述べるが、そこまで言うには説明不足だ。

まず図版の点数が「力」を感じさせるほどは多くない。次に図版を用いた説明がうまく機能していない。例えば「年中行事絵巻」祇園御霊会をスクロールしながら、そこに描かれていないものの登場を「予感させる情報」が隠されている、と言われても訳が解らない。そもそも「暗号が潜んでいるわけで」はないと述べる一方、「暗号を読み解くようにしながら」絵を紹介するのは矛盾している。結局のところ著者が絵巻物から得た情報と言うか印象・感覚がよく伝わらず、「曖昧とした話」に終わっている。

あまり歴史研究の詳細にこだわらずというスタンスだが、直観的であるにせよ得た情報に基づいて武士政権のパートナーを乗り換えること自体が政治的。そういった「冷たい」面も含めて後白河を評価すべきだ。

中公新書「河内源氏」によれば後白河が頼朝挙兵を働きかけた可能性は高い。また、頼朝の「大天狗」発言も、頼朝追討の宣旨が出された後であることを考えれば、「常識では考えられない不思議な化け物」を意味したとは解し難い。そう解するためには、後白河プロデュースの絵巻物の内容がどの程度具体的に頼朝に伝わっていたのか検討する必要があるだろう。

かつて新書は、専門家が一般読者に向け、分りやすく語りかけるメディアだった。この著者は専門家ではなく、ただ学芸員資格を持っていると言うだけで、この本を書いている。本文にニーチェや小泉純一郎が出て来た時点で、白けて読む気を無くした。専門家がこのテーマで専門書を書くならば、価格は9000円でも良い。が、素人が思いつきを並べるだけならば、900円は高過ぎはしないか。出典を注記はしているものの、本当に読んだ(読めている)のか??

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