スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫) の感想

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参照データ

タイトルスモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者F・アーンスト・シューマッハー
販売元講談社
JANコード9784061587304
カテゴリ » ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想

購入者の感想

『スモール イズ ビューティフル(Small is Beautiful)』はF・アーンスト・シューマッハーという思想家であり、文明論者が1973年に出版したものである。この著者が主張しているのは、高度に発展した先進国の工業文明がもたらす、経済至上主義や何の反省もなく巨大化する技術を批判し、もっと人間の身の丈に合った経済活動をすべきだということである。
時が流れ、今日も依然として、グローバル競争に勝つために各国は成長戦略をとり、そのための技術革新に躍起になっているが、本書がいうように、それは本末転倒ということなのだろう。この本が書かれてから40年ほど経っているが、今でも人間社会の本質は変わっておらず、本書の主張は新鮮に感じられる。本書にあやかって、現代的なものに置き換えた『尊ぶべきは、小さな社会と細やかな心~Small is Beautiful~』(Book Trip)(八木芳昭著)という本が最近出版されている。併せて読むと理解が深まるだろう。

 経済学者の父を持つ、14世紀以来の名家に生を受けたE・F・シューマッハ―(1911-1977)の主著が本作である。発表されたのは1973年であり、その後、本書によって問題提起された「エネルギー危機」が、「第一次・第二次石油危機」として現前のものとなった。こうしたことから、本書は一躍ベストセラーに押し出され、『現代の預言者』(解説より)と崇められた。その後、危機が去るとともに、熱狂も収まったようである。この書物の受容経緯から、小生は、うがった見方かもしれないが、「主張さえも流行として消費する」ムーブメントを感ぜずには居られない。経済学者の批判がこのようになるとは、悲しい皮肉である。
 ともかく、本書は流行に乗る高速船として仕立てられたものではなく、しっかりと打ち込まれた杭の上に立つものである。それは『人間中心の経済学』というサブタイトルからも、少し窺えるだろう。
 本書の構成は、細分すると5部に分かたれる。第一部『現代世界』というタイトルで、経済学のあり方を、自己批判も含め述べている。第二部は『資源』問題について。具体的には、エネルギー資源、土地、教育などである。第三部は『第三世界』についてであり、本書の大きな主張の一つである『中間技術』について述べている。第四部は『組織と所有権』と題し、企業組織を考察の俎上にあげる。最後に『結び』で全体を概観する。
 上記構成各部を見て察しのつくように、現在解決された問題は余りなく、時を隔て同じ問題が、異なる姿形をとって現れているともいえよう。注目すべきは、30数年を経ても、有効性を持ちつづけている論考であるということである。しっかりした思想基盤が、それを可能にしているのだろう。
 読みやすい文体、そして注釈と参考文献もきちんと掲げられている。ぜひ一考に付して貰いたい書物である。
 大いに推薦

前から読みたかった本の一つですが、やはりというべきか、噂にたがわず
素晴らしい本だと思いました。
まさに、現代の経済社会の進む方向の一つの極を示していると思われ、近年の
エコロジー思想との関連性も十分に感じられます。

この本では、経済的であること、いわゆる採算性のみを重視した経済活動により、
いかにいびつな世界が作られているかということを示し、どうやって持続可能な社会を
構築していくかという、人間本位の経済についての考察を行っています。

要するに、著者が主張しているのは、有限の資源で無限の経済成長は有り得ないという
ことであり、欲望に根ざした無制限の消費社会から、節度のある成熟した社会への
転換を提唱しています。それは、著者の言う仏教経済学という言葉に表されるように、
足るを知るという、分別のある、大人の経済であるべきということです。

最近の、破綻に至ったカジノ的投機金融による資本主義の暴走は、彼の主張に全く耳を
貸す事の無かった社会の成れの果てという感じですが、これはある意味、逃れようのない
人間の性を表しているのかも知れません。

著者の視点は常に”どちらか”ではなく”どちらも”であり、一方的に良いものも
悪いものもないのだから、いかに良いところを合わせて取り込むかという現実主義的
な見方で問題にアプローチしているようです。

本書の内容は、今でこそ当たり前のように感じられるような現代的な内容ですが、
これまでの世界の動きを見ても実際に取組むことはなかなか困難であり、実現を阻む
ものが、人間の本性に深く関わる根深い問題なのだと感じます。

社会的転換点にある現在の世界において、方向性の転換が現実に可能なのか、
今こそ我々は試されているのではないかと感じられる、重い問題提起の本だと思います。

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