書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫) の感想

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参照データ

タイトル書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)
発売日販売日未定
製作者寺山 修司
販売元角川書店
JANコード9784041315224
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

昭和50年頃に若者だった人も、裕福だったわけじゃ無いし、スポーツカーをおいそれと買えていた訳じゃ無い、年上である中高年の、経済力・地位から若者へ向けられる目、不平不満、人間関係での悩み。これらを仲間と分かち合い吐き出すべく、喫茶店やバーへ行き、フォークソングとして歌詞に載せ呟いていた様な時代。
(この喫茶店等の部分は、私がステレオタイプで想像で書いてます)
それが、今ではツイッターであったりブログであったり、インターネット上の人の集まり:SNSに取って代わり、似たようなことを呟いている。
第一章目からこんな印象を受けました。

正直に言うと、私自身は寺山氏の事を全く知りません。
年齢はおろか、どのような方だったか、どのような書籍を出しているのかも全く知らずにこの本を最初に手にしました。
経緯はTVの特集にて。独り葛藤を繰り返し生き辛さを感じていた、若き日の増田セバスチャン氏がこの本を手にし、世界が変わったとの言葉を聞いてからでした。増田氏の常識に囚われない、唯一無二の個性(オリジナリティ)への探求の原点ともいうべき、「そんな本があるんだ」と興味を掻き立ての購入です。

冒頭一章を目にして、寺山氏がどのような方か少しづつ判り始めました。
とにかく常識に囚われない考え方、物事の見方、冗談交じりでもどこか冷静に分析している。
もう、「面白い人」と言う言葉がぴったり当てはまる。
いい意味で文学と言う枠にすら嵌ろうとしないため、表現も砕けていて読みやすい。
難しくて堅苦しい言葉は、置き換える言葉が少ない時に多少ある程度。

章ごと、小題ごとの内容は、
様々な"言葉"を使い、言葉遊びで描かれたアート作品の様な斬新な書でした。
(判りやすく敢えて悪く表現するなら、纏まりが無い自由奔放な内容の連続で小説では無い。)

思っていたほどハード・コアじゃなかったので拍子抜けしたというのはアル。たしかにこれは常識があってこそ成立する非常識というやつで、「白か黒かのチョイスなら、間違いなく黒を選べっ!」みたいなね、いかにも本筋は物書きっぽい切り口だと思ったが、僕が感動したのはそういった寺山氏の理屈じゃなくって、彼の世界観である。
たとえば、ただ酒に溺れて、女に逃げられて、博打ですって、殴り合いして傷だらけになって、「へっ、これぞまさに人生さ」という程度の内容ならそれこそ笑い話にもならないが、この人の場合はそこに競馬や、長距離トラックや、サッカーや、拳銃や、魔術系美術や、定型っぽさの欠片もない下品な詩やらが絡んでくるから、話が絶望やミジメさに終着しない。どこかいつも進行形で、希望じゃないけど明るさはあるのだ。
自殺を勧めたかと思えば、「この世が辛いからという理由で逃げるようにする自殺は最悪だ」とか、「この世がバカらしいから死ぬというような自殺はこれまたダサい」といったようなことを言い放ち、自殺は物理的にも精神的にもなに不住なく、なおかつ驚異的な頭脳を有した人間にのみ許される至高のエンターテイメントなのだと説き、トラックにひかれた片目の競馬狂の弔い合戦に競馬場に行き、片目の不住な馬に有り金はたいたりというヘンテコだけどなんか分かるような人生美学。
蔵書を全て売り払って、町へ出て遊郭と博徒の世界を乱歩して、結局文学に戻ってきた奇妙な作家の不可思議なエッセイ集。最終的に言っていることも決してそれほど非道徳的ではなく、まぁたしかに一理あるよねという感想をつい持ってしまう内容なのです。個人的には全然好きな作家のタイプではないが、ガンジガラメの文学界において、ヘンなことを言い続けた功績は評価したい。とくにハイティーンズ傑作詩集選はズバ抜けた詩集っぷりです。
ちなみにパーキングエリアでの長距離トラックの運ちゃんのちょっとした人生紹介なぞはとっても素敵でした。全体としてはそんなに高い評価ではありませんが、部分々々はかなりイケてると思いました。

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