流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則 の感想

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参照データ

タイトル流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則
発売日販売日未定
製作者エイドリアン・ベジャン
販売元紀伊國屋書店
JANコード9784314011099
カテゴリ » ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 科学読み物

購入者の感想

大学(院)から会社での設計においても物理との付き合いは身近であったが、この”コンストラクタル法則”を知ったのはこの本であった。非線形やマンデルブローのフラクタルも多少の知識を持ち合わせていたが、身近に接している現象を一つの法則から理解できると言う説明には驚いた。分かり易い説明で自然の出来上がる理屈が容易に理解できる。こららの法則を理解すると共に自然の流れに逆らって公共事業の改造を推し進める不合理に目覚めて頂ければと思う。

生物物理学の啓発本としては優れている。著者が提唱するコンストラクタル法則とは単一の法則というより、自然界の流動するもの(変化し続けるもの)は顕著なパターンを生み出す性質が備わっているというもので形而上学的な主張に近い。実際に取り上げられている例は生物や自然の地形のパターンから人類の歴史、文化、都市の構造まできわめて幅が広い。生物の形態を物理学的に説明する試みは昔から行われており、最近ではシーン・キャロルのエボデボ本やフィリップ・ボールの著作がある。進化理論としては、自然選択を否定する点で70年代に流行したグッドウィンらの構造主義生物学によく似ている。

著者の自然選択否定論は混乱している。というのも選択を全く無視しているところもあれば、こじつけめいた馬鹿げた批判をしているところもあり、正しく理解しているかのような記述もあるからだ。代謝の効率性にせよ、素早く動く動物の流線型のボディにせよ、何が最適なデザインであるかを説明するのが物理学だという指摘は全く正しい。しかし自然選択は最適デザインがどのように達成されるかを説明するのだから、排他的な関係にない。馬鹿げた批判の例を挙げると、最適デザインは遺伝子に刻み込まれているというが川や山の遺伝子はどこにあるのか?という問いかけがそうだ。著者は序文で三角州の航空写真(細い川が網状に走っている)と肺の気管支の写真を比較している。一見するとそれらはよく似ていて同じ法則から出現したと信じこみそうになる。だが細部の構造は大きく異なる。気管支は完全なツリー構造しており先端の肺胞まで23回の分岐を経、分岐回数はおそらく遺伝的に決定されているだろう。三角州の川はツリー構造をしていない。類似は表面的なものだ。

興味深かった部分をあげると、白人が水泳に強く、黒人が陸上競技に強いのは肉体の物理的な特性から説明、予測できるらしい。『人種とスポーツ』によるとこの活躍パターンの違いは文化的要因によってうまく説明できるようだ。もちろんこの2つの説明も排他的でない。文化的な障壁が完全に取り払われれば、あとは著者の言う通り物理学だけで説明可能になるかもしれない。

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