病気がみえる 〈vol.10〉 産科 (Medical Disease:An Illustrated Reference) の感想

　私自身は産婦人科専門医であり、周産期母体胎児専門医であります。そのことを前提にコメントを読んでいただけるとありがたいです。
　この本は産科全般にわたる初歩的なテキストです。私自身は本書で産科の勉強をしているわけではありません。一通りの専門知識を身につけた上で本書を時々利用しています。それは、患者さんへの説明や看護師・助産師への教育において、いかに分かりやすく情報を伝えるかを勉強するためです。この本は文章そのものが分かりやすく書かれている上に、挿入されている図やイラストがとてもとてもよいです。そこで、このイラストや図を利用して患者さんへの病気の説明パンフレットを作成し、パンフレットを必要に応じて配布して病気の理解を深めてもらっています。医療関係者でない一般の患者さんにとっては、とても分かりやすいパンフレットがつくれて喜ばれています。看護師・助産師も我々医師が使う専門書は敷居が高く取っ付きが悪いため敬遠されます。しかし、本書を見せながら解説するとよく分かってもらえます。
　つまり、何が言いたいかというと、本書は産科の専門書でありながら、看護師・助産師のみならず、患者さんにとっても読みやすいテキストになっています。もちろん、私自身はほぼ100％理解できますが、患者さんや看護師・助産師にとっては難しい内容も多いことは承知の上ですが、その難しい内容がイラストと分かりやすい文章ですんなり頭に入ります。私にとっては患者さんにこのように説明し、絵を描いて示すと伝わるのだ、ということを教唆してくれているテキストです。
　当院でも専門医を目指すレジデントが初期の段階で使用しているほどのすぐれものです。医学生の勉強・助産師の勉強によいことはもちろんですが、実際妊娠している女性が、正常な妊娠・分娩経過を知ることにも役立つでしょう。また、何らかの異常を指摘された妊婦さんにとっては自分の病気に対する理解を深めるのにも役立ちそうです。
　専門的な内容のレベルの高さではやや劣りますが、入門向けの専門書としてはおすすめの一冊でしょう・