社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)
発売日販売日未定
製作者小坂井 敏晶
販売元筑摩書房
JANコード9784480015761
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

世が世なら禁書となっていたかもしれないくらいの刺激的な内容。社会が秩序を保ちながら変化していくためには「仕掛け」が必要である。それがなければ支配層の交替は必ず大混乱をもたらし、破壊や殺戮があとを絶たない世の中になるだろう。時間が存在する限り不可避である変化を吸収しながら社会の安定を維持するための仕掛けとして人類史上もっとも洗練されているのが人権、平等、自由競争、民主主義といった価値の制度化であるとさらっと言ってしまっている。

「伝統社会にとって平等は異常であり、社会の歯車がどこか狂った状況を意味する。しかし実際、社会は平等でないから疑問は生じない。対して民主主義社会では平等が建前です。人間はすべて同じ権利を持ち、正当な理由なくして格差は許されない。しかし実際は平等が実現不可能な以上、常に理屈をつけて格差を弁明しなければなりません。(中略)近代以降、不平等が緩和されたにもかかわらず、さらなる平等化の要求が叫ばれるのは何故でしょうか。近代社会では人間に本質的な差異はないとされる。市民は同胞であり、同類です。ところで、すでに確認したように同類の間には比較が必ず起き、格差が現れます。したがって下層に位置する人間は自らの劣等生を否認するために社会の不公平を糾弾する必要がある。すなわち、平等主義イデオロギーは、個人主義的人間像が必然的に引き起こす自己防衛・正当化の反応です」

この平等主義イデオロギーが否定される社会では恐ろしいことが起きる。例えばこんな手紙をある日突然受け取る可能性が出てくるのだ。

「欠陥者のみなさんへ。
あなたの能力は他の人々に比べて劣ります。しかし、それはあなたの責任ではありません。愚鈍な遺伝形質を授けられ、劣悪な家庭環境で育てられただけのことです。だから自分の劣等生を恥ずかしがったり、罪の意識を抱く必要はありません。この不幸な事態を補償し、あなたの人生が少しでも向上するように、我々優越者は文化・物質的資源を分け与えます。あなたが受け取る生活保護は、欠陥者として生まれた人間の当然の権利です。劣等者の生活ができるだけ改善されるように、社会秩序は正義に則って定められています。」

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

アマゾンで購入する
筑摩書房から発売された小坂井 敏晶の社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)(JAN:9784480015761)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.