乙女の港 (実業之日本社文庫 - 少女の友コレクション) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル乙女の港 (実業之日本社文庫 - 少女の友コレクション)
発売日2011-10-05
製作者川端 康成
販売元実業之日本社
JANコード9784408550534
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

 人形のようにかわいらしく、純真な三千子は横浜のミッションスクールに通う女学生。ある日、二人の上級生から手紙を渡されます。
 一人は、しとやかで儚げな印象の洋子。
 もう一人は、勝ち気で小悪魔的な魅力を持つ克子。
 戸惑う三千子に級友が教えてくれたのは、「エス」と呼ばれる女学生同士の特別な関係でした。
 「エスっていうのはね、シスタア、姉妹の略よ。」、エスの関係になれば、「相手の靴下のインチから、お弁当の内身(なかみ)、日曜日の行動まで、すっかり知っているのが当然」───。
 男兄弟の中で育った三千子は、「きれいな方は、みんなお姉さまにほしい」と願いますが、雨の日に声をかけてくれた洋子に親しみを感じ、お姉さまと慕うようになります。
 そのことがおもしろくない克子。洋子と離れ、夏の避暑地ですごす三千子に急接近してきて・・・。

 昭和初期に少女たちの間で大ブームとなった本作は、現在、一部では「百合小説」として語られることが多いようです。ですが、そんな色眼鏡的な好奇心だけで読むのはためらわれる、繊細な小説です。
 時代と考え方が今と違いすぎてついていけない、なんてことはありません。女性であれば誰しもが経験する喜び、戸惑い、時には友とぶつかりながら、悩んで成長してゆく・・・、そんな少女の微妙な心の揺らぎが細やかに描かれています。
 昨今のハラハラドキドキ感が目白押しのライトノベルを読みなれた方たちには退屈してしまうかもしれませんが、素朴な野の花のような少女たちの心に、読み手もまた素直な心で接することで得られるものがあるでしょう。

 原案者の中里恒子は、自らもミッションスクールに学んだだけに、作中の女学生生活の描写はリアルであり、根底にはキリスト教の教えがあります。
 洋子や三千子の貧しき者、弱き者を愛し、慈しむ心。
 克子の外国人に対しての偏見のなさ、日本人としての誇り、グローバルなものの見方をする近代的な思考。
 同じキリストの教えを胸に、可憐な物語を書きのこした松田瓊子の諸作品(「すみれノオト 松田瓊子コレクション」/河出書房新社刊、他)と読み比べてみるのもいいかもしれません。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

乙女の港 (実業之日本社文庫 - 少女の友コレクション)

アマゾンで購入する
実業之日本社から発売された川端 康成の乙女の港 (実業之日本社文庫 - 少女の友コレクション)(JAN:9784408550534)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.