無冠の男 松方弘樹伝 の感想

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参照データ

タイトル無冠の男 松方弘樹伝
発売日販売日未定
製作者松方 弘樹
販売元講談社
JANコード9784062205443
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

前著と同様、この著者の映画の本は抜群に面白い。松方弘樹の人生と役者としての本質がよく分かった。著者も書くように、松方弘樹がこれほど頭がよく、知恵のある人とは知らなかった。自分の演技についての記憶力の確かさ、自己や監督・他の俳優を評価する視点の鋭さ、役者としての工夫や演技プラン、殺陣や着付け、鬘等々の膨大な薀蓄、知識等々、読んでいて気持ちがいい。これらは、映画の仕事がなくなった俳優の両親(近衛十四郎、水川八重子)に連れられ、どさ廻りの芝居一座で育ったことも関係しているだろう。書物や学校で学んだ生半可な知識ではない。

興味深かったのは、高倉健との確執だ。東映京都は常に二大巨頭の大スターの周りに中堅、若手、大部屋まで、役者が派閥に分かれる。松方は、高倉健と張り合っていた鶴田浩二の派閥でかわいがられた。鶴田浩二は、365日女性をとっかえひっかえしたらしいが、松方も同じような私生活だ。高倉はそれを嫌い、高倉主演、松方助演の映画の完成試写後に、スタッフの前で松方に露骨に嫌味を言った。松方はいまだに怒りを持っており、高倉を諌めた佐伯監督に感謝している。高倉は、堅気の家に生まれ(明治大学卒)、生活を律し、己のイメージをずっと守った。松方は、私生活でしたいことをする役者馬鹿タイプ、インテリの対極だ。松方は、ひと色の役しかできない高倉(どんな役をやっても「高倉健」)に比して、主演でも助演でも汚れ役でも工夫して演じられる自分を誇りにしていた。

松方は、いい意味で活動写真(ヤクザも暴力もエロもてんこ盛り)の東映に合っていたようだ。チャンバラ映画から任侠路線、実録抗争もの、「変格」時代劇大作等々、東映の様々な路線の変遷に順応し、屋台骨を支える役者になっていく。一方、高倉は、実録路線が始まると東映を退社し、(スマートなカラーの)松竹、東宝等で文芸大作に次々と主演、「高倉健」のブランドを築いていく。

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