田園発 港行き自転車 上 (集英社文庫) の感想

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参照データ

タイトル田園発 港行き自転車 上 (集英社文庫)
発売日2018-01-19
製作者宮本 輝
販売元集英社
JANコード9784087456851
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

わたしの、良い小説か、否か、の基準に―――もちろん、完全にパーソナルなものですが―――そのまま英文翻訳した際に、(普遍的)読者に耐えられる文章・内容か、というのがあります(別に、他言語の読者なんて、知ったこっちゃないよ、の意見の方は除いて)。 仮に、英文小説の読者に、この小説の良さが伝わらないとすれば(わたしは伝わらないと思います)、その原因は 1)作品の主題にあるのではなく、日本語の記述・構成自体に、大きな欠陥を内包する。 あるいは 2)他言語に翻訳しようのない、たとえば、方言でなければ成立しない小説。・・・・・かなり乱暴には、この二つに帰結できるかもしれない。

ゴッホ『星月夜』の描写や模写した作品の法的位置に関する記述、加えて、富山県の滑川近辺の地理・情景の過剰とも思える詳述が気になりました。 また、競技用自転車に関するウンチク的記述、チャンドラーの小説で有名な、カクテル「ギムレット」の話、ラフマニノフの薀蓄やピアノ協奏曲の説明のくだりも余計な気がしました。

この小説における、情景描写、風景描写の過剰ともいえる書き込みについては、「ここまで細密に外的な描写をしなくとも、読者はこのお話を真実と信じて物語に入り込みますから、先生心配しないで」と、思わず慰めてあげたくなりました。
  ただ、著者と編集者が協力して――――たぶん――――書いてあることの何十倍も、下調べをしたことが伺われ、《お話》に本当らしさを付与することの大変さが想像できました。お二人で―――著者個人の物知りも含めて―――調べたことを大量に小説にぶち込む、この小説のやり方には・・・・「なんかナー」という思いが湧いてくるのを抑えられませんでした。この小説には、著者の確固たる信念が薄いような気がしました。 本の厚さが欲しい時は、この小説のように、無駄に長い「英文小説」を読みますので・・・・。

よく「無人島」に一冊だけ本を持って行っても良いとしたら、どんな本を持って行きますか(?)、という問いがあります。
【いろいろな理由】から、この作品は間違いなく、その候補に入ります。

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