技法以前―べてるの家のつくりかた (シリーズ ケアをひらく) の感想

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参照データ

タイトル技法以前―べてるの家のつくりかた (シリーズ ケアをひらく)
発売日販売日未定
製作者向谷地 生良
販売元医学書院
JANコード9784260009546
カテゴリ » ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学

購入者の感想

 本書は、『技法以前』というタイトルから推定されるように、当事者研究などの生みの親である向谷地生良さん(以下、著者)が、その創出や展開にまつわるたくさんの“裏話”を披露し、その“手のうち”を明かしながら語りあげた、当事者研究を実践するための心得集のようなものです。サブタイトルから推定されるような、「べてるの家のつくりかた」を伝授するための指導書ではありません。それは、経験的に導き出された、いわば高度の生成的技術体系を、ふつうの教科書のようなものを通じて伝えることはできないからでしょう。
 ふつうの専門家教育では、教科書を使って知識を伝達し、実習を通じてその技法を習得させてゆくわけですが、「マニュアルのない」べてるの家は、そうした通常の方法では作れないということです。その“精神”が伝えられさえすれば、技術はおのずからついてくるものですが、秘伝ではないにしても、その伝授は実は相当に難しいのです。著者も、無二の伴走者である浦河赤十字病院精神科の川村敏明先生も、べてる以外では当事者研究はできないという“通説”に反論していますが、べてるの家の主流たる統合失調症に限って言えば、その実現は、不可能とはいえないまでも、たぶん簡単ではありません。
 その伝承が難しいことは、たとえば精神分析を考えるとわかります。フロイトの有能な愛弟子たち全員が、フロイトと同じことをするようになったわけではなく、その多くが創造性を発揮すべく自らの独自性を打ち出そうとしましたし、それどころか、一番弟子のはずだったユングを筆頭として、早々に離反した弟子すらいたからです。逆に、フロイトの理論をそれなりに継承したとされるアメリカの有象無象の専門家たちは、フロイトを神格化し、その理論を宗教の教義のようにして崇め奉るまでのことをしました。精神分析を離れたある精神科医は、ロンドンの精神医学研究所の教授から、「丸腰で街を歩いてだいじょうぶか」とまで心配されたそうです(Stevenson, 1990, p. 8)。これが、著者の嫌う「専門家の権威化」(48ページ)という、現実にはごくふつうに起こる展開なのでしょう。

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医学書院から発売された向谷地 生良の技法以前―べてるの家のつくりかた (シリーズ ケアをひらく)(JAN:9784260009546)の感想と評価
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