余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる の感想

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タイトル余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる
発売日販売日未定
製作者ロバート・B・ライシュ
販売元東洋経済新報社
JANコード9784492443804
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学

購入者の感想

米国の経済格差は「過去100年で最悪の水準」とイエレンFRB議長が警告し、2015年の一般教書演説でオバマ大統領は、所得・資産に対する累進的な課税、低中産階級への税額控除、コミュニティカレッジの授業料無料化などの是正策を打ち出した。読後間もないタイミングで目にしたニュースに、著者が発する警告と提言が一部なりとも米国政界で共有されていることを感じた。

「キューバではいつ選挙が行われるのか」という揶揄に、フィデル・カストロは「米国では幾ら金を持っていたら選挙が出来るのか」と返した。著者は富裕層の選挙資金やロビイスト活動を通じた政界への影響力を挙げ、長期に渡る富裕層寄りの政策(例えば高所得者や資産家に対する税率の段階的な低減:米国でも昔はこれほど高い税率が富裕層に課されていたとは知らなかった)が格差拡大を助長してきたと指摘する。富の集中が政治を介して加速していく、つまり所得格差は米国の現代資本民主主義政治の構造に起因する副作用的現象と言っているわけだ。カストロの言も肝を突いている。積極的な是正策なしには格差は拡大し続ける一方だろう。「そして中間層がいなくなる」という副題(邦題)はぴったりだ。

格差拡大は大多数の購買力低下を通じて経済成長力を押し下げ、これがまた格差拡大を加速させるスパイラルを生み出す、そして社会経済層の分断は政治的な不安定要因となる。この格差脅威論の帰結は広く共有されているところだ。本書で描かれる「2020年大統領選挙」シナリオはいささかドラマチックに描かれているきらいはあるが、社会経済層の分断が政治的混乱に留まらず内戦状態にまで至った他国の歴史とその傷跡を見れば、このリスクは真剣に受け止めるべきだと思う。

富裕層への増税、低所得層への減税、教育へのアクセス向上、インフラ整備など、著者が本書で提案する処方箋の方向性は2015年の一般教書演説に反映されていると言っていい。これがポスト・オバマにつながっていくかどうかはまだ分からないが、格差問題のトップランナーが大きな見直しに着手する今日の光景を理解するのにはとても良い本だと思う。

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東洋経済新報社から発売されたロバート・B・ライシュの余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる(JAN:9784492443804)の感想と評価
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