レッドアローとスターハウス―もうひとつの戦後思想史 の感想

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参照データ

タイトルレッドアローとスターハウス―もうひとつの戦後思想史
発売日販売日未定
製作者原 武史
販売元新潮社
JANコード9784103328414
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

原さんの作品をまた読むことになる。「団地の空間政治学」に続く作品だ。またタイトルが実にキャッチ―だ。もっともこのタイトルは中身とはあまり有機的に結びついてはいないのだが。そしてこの作品は単行本(2012年)、新潮文庫(2015年)そして中公叢書(2019年)と実に三回も媒体を変えて出版されているのだ。察するところ、それなりに読者を獲得した作品なのだろう。ところで中公叢書の増補新版はまだ未読でこのレビューも単行本(2012年)に基づいている。
たしかに面白い。あっという間に読ませてしまう。そして歴史的な射程も長く、かつ「幅広」にテーマを掘り下げているのだ。テーマには、西武という会社の経営戦略と特異さ、共産党と西武という不倶戴天の敵の間の暗黙の共謀、共産党内の路線闘争、公団住宅のデザインの発端、社会主義と集合住宅の有機的な関係、西武線沿線地域での特異な政治参加の形態の歴史的な発端と要因、西武線、中央線そして東急沿線のそれぞれの政治的な風土の差異の背景、さらには狭山事件の経緯などまでが含まれている。特筆すべきなのは、団地勃興期の50年代後半から70年にかけての様々な資料の発掘と読み込みだ。だれも振り向くことのなかった自治会等の会報やミニコミ誌、行政の資料を丹念に読み込み、そこに潜んでいる陰影と語られなかった事を存命の様々な関係者との面談でフォローし、当時の時代の雰囲気(climate of opinion)に接近しようとしているのだ。
そこに浮かび上がるのは、この西武線沿線という地域、それもそこに突如として出現した公団の団地という限定的ながら特異で同質的な「空間」が作り上げた「政治」というわけだ。そしてその生み出された空間は、決してアメリカニズムの忠実な追求の反映ではなく、むしろソヴィエトという集団主義と大きな共通性を持ったものだというのが著者の結論だ。そういう意味では、「現代から過去を遡及するという転倒した」アプローチとは一線を画すという著者の狙いは達成されている。

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新潮社から発売された原 武史のレッドアローとスターハウス―もうひとつの戦後思想史(JAN:9784103328414)の感想と評価
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