星新一 一〇〇一話をつくった人 の感想

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参照データ

タイトル星新一 一〇〇一話をつくった人
発売日販売日未定
製作者最相 葉月
販売元新潮社
JANコード9784104598021
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

本書はその星新一の生い立ちと父親,生涯つきまとう星製薬との関わり,そして作家’星新一’と日本SFの誕生とその生涯をまとめた多くの証言と資料に基づいた評伝であり,傑作である.星新一の作品はショートショートを問わず長編やドキュメンタリーでも,簡明な文体に醒めた視点が特徴であり,私はその作風から長年,飄々とした印象を持っていた.確かに,SFファンにとっては宇宙塵やSF作家クラブなどの例会における星の言動はよく知られていたことである.しかしながら,本書では確かに星のそのような面があったことを述べながら,それとはまったく異なる星の一面を描いており,それは私にとっても大きな衝撃であり,それは多くの他のファンも同様ではないであろうか.

そもそも,私が星新一のショートショートに出会ったのは小学生であり,やがて星から離れファンタジーやサイバーパンクに移った.星を読まなくなったのは,この作家は子供向けであるというイメージがどこかしらあったためであろう.星の作品には血湧き肉躍るわくわく感や男女の機微はなく,思春期の少年には物足りなかったろう.また太宰や三島のような高尚な文学とも感じられなかった.とはいえ,書店では平積みも多く大変売れていたという印象がある.

しかしながら,本書はそれこそが星の苦悩であったと指摘する.確かに売れ続けてはいても,所詮は子供向け,ただのエンターテイメントと見下され,かつては直木賞の候補にもなったが受賞できず,その後もほとんど賞らしき賞はなく,文壇に認められぬことを愚痴り,苦悩していたことは,一般的に星の作品から受けるイメージとはまったく異なるものである.名誉や評価を欲した醜さ,そして晩年の作品の生き残りをかけた手直しは,ほとんど妄執ともいえる執念を感じるのである.

まったく「人間を書いていない」と言われた星の,なんと人間的であることか!

作品から読み取ることのできぬ作家の素顔,それは星が書き手として一流であることの証である.しかし,本書で明かされたその素顔との差はあまりにも大きい.

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