沈黙 SILENCE(1971年版) [DVD] の感想

仕様からお話致します。薄いブックレットが1冊。内容はパンフレットと少しだぶっています。DVDに収録されているのは、本編と3分間の予告編だけです。

スコセッシ版「沈黙」を見てからこの篠田版を観ました。Amazonでは余り評価が高くないようですが、どうしてどうして、47年前に制作された作品としては素晴らしいと思います。
スコセッシ版との一番の違いは、キチジローの描き方が秀逸だと言うことと、映像が日本的な陰影をよく反映していてとても美しいです。また日本語で全体が語られているので、スコセッシ版より落ち着いて観ることができた気がします。
スコセッシ版ではほとんど入らなかった音楽が、篠田版では武満徹の素晴らしい音楽で、キリシタン弾圧時代の不安定さを醸し出しています。
何よりキチジロー役のマコ岩松が素晴らしいです。何度もロドリゴを裏切り、何度もまた戻って来て「コンヒサンを」と願う姿に、何度も人間の弱さや、神に帰依する姿を語られます。マコ岩松は既に鬼籍ですが、ベテランの名優の若き姿は是非観る価値があります。

ロドリゴが逮捕される直前に赤い着物に着替えますが、それは見終わると、イエス・キリストを表しているのだとわかります。また途中で出てきた赤鬼のような存在も日本の神を表し、キリスト教が弾圧されていることを強調しています。

また井上筑後守役の岡田英次、通詞役の戸浦六宏は圧巻です。
岡田英次は冷徹な役人の役を。また戸浦六宏の通詞の存在はこの映画でとても大きな役割を果たしています。ロドリゴをおどしたりなだめたりして棄教を勧めます。「なに、形だけで良いのだ」と何度も感度も笑顔で薦める戸浦六宏の演技は圧巻です。
フェレイラ役の丹波哲郎も私は違和感がある程ではありませんでした。この映画ではあまりフェレイラの存在を大きく扱っている感じはありませんでした。