チャーリー・パーカーの技法――インプロヴィゼーションの構造分析 の感想

前打音はどのジャズミュージシャンでも使うテクニックだし、トライトーンに着目したハーモニックインプロビゼーションも現代のジャズの語法として確立されている。これらはパーカーを中心とするビバップ革命により定着したものだが(それより前にアートテイタムはピアノソロ演奏でさりげなくやっていたが)、この本はそれよりも遥かに高度なアドリブ手法であるパーカーのリニアラインとRelative Majorコードの使い方を徹底的に解説した唯一無二の本である。ビバップから70年以上を経た今日でも天才パーカーを超えるインプロバイザーが出現しないことの秘密がこの本では語り尽くされているし、パーカー以外の演奏家がまるで幼稚園児のように感じてしまう。私のアイドルのバドパウエルですら、パーカーのようにリニアラインを使いこなせてはいない事をこの本は教えてくれる。ただしある程度ジャズ演奏に精通した演奏家であれば、この本に散りばめられている天才パーカーのアドリブ手法の解説から得られるところは非常に多く、この本を深く読めば読むほど自分のアドリブ演奏が改善していくのを体感できる。天才の爪の垢を煎じて飲めば、身になっていくのである。私は残りの人生で死ぬまでこの本にインスパイアされ続ける事だろうと思っている。ただし初心者ではこの本には歯が立たないというのも現実である。