ヒップホップ・ジェネレーション[新装版] の感想

※サンプル画像 クリックで拡大します

本書はヒップホップの歴史書、というよりヒップホップという視点から紐解いたアメリカにおける有色人種の戦いの記録を圧倒的なボリュームで描いた研究論文という方が正しいかもしれない。
ヒップホップが何故誕生するに至ったのか、ヒップホップがアメリカ社会に与えた影響など、ヒップホップが巻き起こした現象の背景やアメリカにおける有色人種の歩みがこれでもかと詳細に記載されている。

つい数十年前の話だとは俄かには信じがたいアメリカにおける有色人種の扱い、ヒップホップというここ最近で最大の影響力を持つカルチャーが歩んできた差別との戦いがしっかりと勉強出来たのは良かった。
だが、あまりにも多くの人物や社会の出来事が盛り込まれている故に読み辛さを感じる事も多々あった。

アメリカの歴史について、あまり多くの情報を知らない日本人が読むには中々に大変。
一回で全てを理解するのは無理に等しい。
ただこの本を完全に理解できるようになればヒップホップだけではなくアメリカという国において、有色人種が歩んできた歴史の多くの知識が手に入るだろうと感じる。

これらの理由から、ヒップホップを好きになり始めたビギナーにはあまりお勧めできない。何故なら、本書を読み進め、理解するためには相当の時間と覚悟が必要だからだ。
しかし、ヒップホップを心から愛する人には是非お勧めしたい。本書の帯にライムスターのラッパー宇多丸氏が寄せている言葉通り、ヒップホップを「知ってるつもり」になっている人こそ、この本を読むべきである。